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ウルバの体が地面に着いたと同時に、視界には一人の女性の姿があった。その女性の体は地に足を着けていない。自分と同じくして体を地面に着けているのだ。これはどういう意味なのか理解できた。だが、理解できたとて、立ち上がれるだろうか。
視界に少年と男の姿が映った。男が言う。お前にしてはよくやったじゃねぇか、と。この彼は少年を褒めているのか。ああ、羨ましいことだ。
――俺もウルノも……誰にも褒められたことないってのに。
親の愛情はもうもらえない。親友すらもいない。ただ、いつも隣にいたのはウルノだった。小さい頃から。両親がナズーになってしまったときから。まだ小さい彼女を連れて逃げ出した。そんなことを知る由もない、おてんばなウルノ。それを遠くで見守る。見守るためにも、生きていくためもお金がいる。だから、たくさんお金がもらえるような仕事を探した。それがこの結果だ。
少年が答えるようにして言った。ぼくはもう迷いありません、って。
――俺だって、迷いはもう……チクショウ。本当は誰も傷付けたくなかった。
――初めてウルノが人を殺した日。あいつは泣いていた。チクショウ。俺だって、こういう仕事をこいつに教えたくなかったんだ。なんでって、あいつが泣くから。悲しそうにするから。でも、時間が経つにつれて……ウルノが大人になった頃になれば、こいつは人を殺すことに躊躇がなくなった。俺もなくなった方だが、殺した日の夜は手が震える。こうして今も震えている。あれ、おかしいな。まだ人を殺していないってのに。
遠くから爆発音が聞こえる。その場の騒ぎはより一層大きくなる。何があったのだろうか、って考えていると――視界は上向きになった。ああ、仰向けになったんだ。どうしてだろうか? わからない。全くもって。
「にぃ」
今度はウルノの声が聞こえた。今のあいつの声じゃない。小さい頃のウルノの声だ。小さな子の声――。
「ウルバおにいちゃん……」
次にいつものウルバの声が聞こえてきた。いつもは『おにいちゃん』だなんて言わないくせに。呼び捨てで言うのに。珍しい。雨でも降るんじゃないか? そう思っていると、真っ赤な空を背景にウルノの顔が見えた。幼い頃のあいつだ。ああ、そう。こうして傷だらけの泥だらけだったな。なんせ、家がないから。自分たちが住んでいた町はナズーの巣窟になってしまったから。
「おじいちゃんが……」
そこでようやく我に返る。眼前にいるのはウルノじゃない。この子は――ああ、そうだ。この子は社長の孫か。それにしても、こうして見たことがなかったから気付かなかったけれども、小さいウルノに似ているなぁ。
「……う、る……」
――ウルノって言ってしまいそうだ。この子は違うのに。きちんと、社長が名付けた名前があるってのに。ばかだな、俺。ウルノ、聞いていないよな?
横を見る。相変わらず、地面に横たわり微動だにしない。
――こいつ、寝起きが悪いんだよな。まあ、いいか。まだ寝ていても。
「さようなら」




