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『大切な孫は俺たちが預かった。無事に返して欲しくば、お前の部下が連れて去った女をこちらに返せ。制限時間は二十三時間。それまでに拒否や時間が過ぎれば、孫を含めた屋敷の連中は皆殺しだ。』
遣いの者を出して十時間は経った頃だろうか。時計を見ないから時間の感覚がわからないでいた。本当にケレントが、自分たちが提示した条件に対して、素直に応じてくれるだろうか。とてもあやしくて信じれそうにもない。フレイヴが返事を今かと待ち侘びていると、彼の孫が「あのう」と小さく声を出した。初めて聞いた気がする。子ども特有の甲高い声だ。それを聞いているだけでも、ナズーの姿になった男の子や故郷でよく遊んだゾイを思い出す。
男の子にフレイヴは「何?」と応じた。別に口を開いてはいけないとは指示を出していないから。もしも、オルチェが自分の立場であるならば、黙れの一言だろう。
「おじいちゃん、どうかしたの?」
純粋無垢とはこういう子どもを差すのだろう。不憫だと思う。彼の祖父は裏で汚い手に染めながらも生きようとしている。孫たちに本当の自分を見せないだなんて。なんて可哀想なんだろうか。そんなのだったら、最初から知らない方がいい。だったら、知らなくてもいいように殺せば? 違うっ! 右手がそうささやくも振り払う。まだ時間はあるはず。
その質問にフレイヴは頷いた。男の子の祖父が何かをしたのは事実だから。
「ぼくの友達をね、どこかに連れていっちゃったんだ。大丈夫だよ。きみが知っているおじいちゃんなら、すぐにぼくたちのもとに……」
そう信じてあげたい。なんて口を開いたのと同時だった。フレイヴの後ろから「それは無理な案件になりそうだ」とオルチェが射撃砲を手にしてくる。その言葉はそのままの意味で捉えてもいいのだろうか。
「バックヴォーンさんは?」
わかっていても、訊きたい。オルチェの答えを知っていても、待った。ややあって、彼は答える。
「ここの連中を見捨てるらしい。外を見ればわかる」
その言葉通り、バルコニーから外を見てみると、屋敷の敷地内の向こうからは武装をした者たちがこちらへとやって来るではないか。これは――。
「向こうは俺たちの戦力を知っているはずだ。だから、力尽くでも取り戻せると過信しているんじゃないか?」
「己の過信こそ怖いものはないですからね」
これはもう致し方ないことだ。自分たちに一切の非はない。ケレントが悪いのだ。勝手に奪っていったのだから。それはこの報いだ。喜んで受け取れ。




