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これで完全に世間へと敵に回した。そうフレイヴは思った。少し離れたところを見ると、逃げられないようにして屋敷にいる全員が拘束されている。自分たちがしでかしたことだ。これはいくらケレントが悪いと判断がついていても、立派な犯罪であることは間違いない。だが、このようなことで怖けつくことはないし、後悔することもない。向こうも同じような手を取っているのだから。
――カムラを返せ。さもなくば、お前の孫を含めた屋敷の者たちを皆殺しにする。
決意は変わらない。手に握るカムラの剣が自然と心地良い。事情をよく知らない使用人たちだろうか。彼らはケレントの孫が危険に及ばないように、恐怖心を少しでも和らげようと「大丈夫ですよ」そう言い聞かせてあげていた。それを見たフレイヴはどうしてか嫉妬してしまう。羨ましいと思った。だって、極悪非道なあいつにこんな幸せそうに――色々と恵まれた孫がいるのだから。まるで自分の人生なんてクソだとでも言えるくらい。下唇を噛みしめたとき、後ろからオルチェがやって来て、肩に手を置いた。
「気に入らないなら、殺すという手もあるぞ」
それがフレイヴからしたら、甘い誘いのように思えた。右手が殺してもいいんじゃない? と拍車をかけてくる。いや、その誘いには乗ってはならない。まだ我慢しろ。きちんとカムラを返してくれ、なおかつもう自分たちに手を出さないと、と書類上の契約まで済ませないと。ケレントに対する信頼性は薄い。だからだった。
「いえ、まだしません。オルチェさんは引き続き、外の様子をお願いします」
「わかった」
こちらとら、助言を出しているつもりではあるのにな。オルチェの方からそう聞こえるような雰囲気が漂う。
――確かに何度も言おう。ぼく自身は殺人鬼だ。だけれども、アルフレッドさんみたいに自分の意思とは関係なく、人を殺す気にはなりたくない。ぼくは自分の意思と理由を持って、人を殺すと決めたのだから。
孫の方を見る。男の子は怯えた目でこちらを見てくるだけ。その目を見て、彼は早くケレントから返事が来ないだろうか、と待ち侘びていた。気まずい空気は耐えがたいから。この子の目を見ていると、白昼夢の村でナズーに変わった男の子を思い出す。
『約束』
【やくそく】
ささやく右手。殺せって。やかましい。待てよ。ああ、早く反応を見せろ。もう、我慢ならないのだから。
自分の右腕に食い込むのは左の爪。フレイヴは自身で断言した通り、殺人鬼のような衝動を抑え込むのだった。




