177ページ
静かな食堂。気まずい思い、複雑な心境で昼食をいただくフレイヴとオルチェ。そんな彼らの心を知らないケレントの孫は黙々と食事をする。一言も発さずに。
「…………」
ただただ、食器の音が聞こえるだけ。最初こそ「美味しい」だのと話題を出していたのだが、向こうの反応は頷くだけ。何も言わない。それだからこそ、これからやろうとしていることに後ろめたさは少しだけある。だが、カムラの一件がある。それは許せない。この男の子は素直そうな子だという印象だ。だとしても、何かしら話してくれないと。こちらに心を許しているのかすらもわからない。
結局、何の話題もないまま昼食が終わった。執事がようやくと言っていいほど「いかがでしたか」と訊いてくる。どうせならば、食事中に訊いてくれたらばいいものを。食事の感想、オルチェが「美味かった」と一言。それに続くようにしてフレイヴも「美味しかったです」と返答した。だが、ここで躓いてはいけない。カムラのため、自分のため。ナズーのいない世界のため。美味な食事は大いに堪能させてもらった。今度はこちらのおもてなしを受けていただこうか。それだから――。
ギラリと光らせる拳銃、美しく輝くカムラの剣。それらは執事と男の子に向けられた。そう、二人が交渉に躍り出たのだ。
「ケレント・バックヴォーンさんにお伝えください。料理は美味しかった、と」
突然の出来事。当然だ。ケレントの孫と執事は目を丸くして驚いた様子でいた。執事は言う。
「何の真似でしょうか?」
「これがあのくそじじいの物真似に見えるか? そう見えるならば、俺があんたの目を診てやってもいいけど?」
孫に向けられた銃口が執事の顔に向けられた。オルチェは男の子が逃げないように、しっかりと捕まえている。彼はどうしたらいいのかわからない表情でフレイヴの方を見ていた。
「あなた方は大旦那様に何用で? どなたですか?」
「決まってんだろ。恨みだ、恨み。伝達係にでも遣いを出せ。バックヴォーンの孫の命は俺たちが預かっている。返して欲しくば、お前が俺たちから強引に盗んだやつを返せってな」
「ひいっ!?」
引き金に指が移動すると、本格的に怯え出してきた。良心は――別に痛むことはない。なぜならば、ケレントが悪いのだから。そう思えば、孫たちに同情する余地は一切ない。
――ぼくたちに非は一切ない。




