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なんという世間は狭いことか。憎む相手を探していたらば、その相手の孫らしき人物と出会うなんて。これが運命というものなのだろうか、とフレイヴは思っていた。オルチェは小声で自身が得た情報を告げる。
「あのガキ、バックヴォーンの孫だ。本物のな。ということは、だ」
ケレントは自分の屋敷に二人がいることを知らない状態。これは最大の交渉条件として使えないだろうか。それはすなわち、孫を人質にとることだ。なんとも卑劣で非道なやり方ではあるが、因果応報という言葉を知っているか。彼はそういう報いを受けるだけ。これはただの結果に過ぎない。聞け、とオルチェは男性――執事と孫の男の子には聞こえない音量でフレイヴに言う。
「あいつを返してもらえる最高の材料だとは思わないか?」
「それって……」
「何を怯えている。お前は殺人鬼だろ。今更道徳を気にしてどうする?」
そう、フレイヴは自ら殺人鬼であることを断言した。実際にそうだ。射撃砲工場で工場員を。言われて思い出す人を斬るという感触。思い出すだけでも――。
「彼らを殺すんですか?」
「それはバックヴォーンの出方だ。返さないつもりならば、俺たちはあいつらを一生逢えなくする。当然の報いだろ? 何も不公平なことではない。これで俺たちとバックヴォーンは対等になれたというわけだ」
にやにやと下卑た顔を見せるオルチェ。だが、次第にフレイヴもそれは悪いことではないと思えるようになった。ケレントがいけないのだ。こちらが嫌だと回答を返していたというのに。無理やり人の大切な者を奪うからだ。早速ベッドの近くに置かれた自身の服のポケットから一枚の紙切れを取り出す。これは間違いなくカムラの本の一部だ。偽物ではない。何度も見て覚えたから。水に濡れてちょっと変になってはいるが。しかし、そんな二人の思惑を知る由もない執事は「お二人方」と優しい声をかけてくる。
「もし、よろしければ、お昼を食べていきませんか?」
その誘いによって、迷いが生じる。今すぐに行動を起こした方がよさそうなのに。別にお腹が空いて――途端、二人の腹の虫は鳴る。ここで鳴るなよ。恥ずかしいだろ。何、ケレントはまだ戻ることはないだろう。ここで腹ごしらえをしておかないと、後々動けなくなってしまう可能性だってあることだし。何も食欲があるのはいけないわけではないし。空腹には勝てなかったフレイヴたちは執事のお言葉に甘えて、昼食をいただくことになるのだった。




