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遠くに見えるのは高くそびえ立つ塔。それがいくつも存在し、橋でつながっていた。二度目の訪問となる独立の国首都『入り組んだ都市』。十一の区画に分かれた大きな都市なのである。首都だからこそ、人の行き来はこの国で一番多いのだ。
「あの巨大な塔みたいなのがたくさんあるところが一番街ですか?」
そんな入り組んだ都市から離れた岩陰からフレイヴは様子を窺っていた。同じようにして街を見つめるオルチェが「そうだ」と小さく頷く。
「一番街は金持ちが住む場所とも言える。まあ、国の首都だしな。国のトップがばかでかい高級椅子に座っている場所でもあるからな」
「バックヴォーンさんもそこに……」
「可能性は高いとしか言いようがないけどな。けど、お前らがバックヴォーンに会いに行ったときは若いやつだった。ということは、七番街には偽者役者が配置されていたってわけだ。他の区画街にも偽者がいるかもしれん」
だったら、とオルチェは拳銃に弾を詰め込みながら細く息を吐いた。
「やつにとって一番安全だと思う場所はどこか。奪還されたくないがために逃げる場所と言えばどこか。そう、一番警備がガチガチの一番街に決まってる」
「そこ、ぼくたちが入るには厳しそうですね」
「当然だ。身分は下、ボロボロの身なり。どう見たって、エリートでもなければ、金持ちでもない。見た目は……十一番街のガキだな。いや、十一番街で権力があるガキかね。それでもきちんと服と靴があるから」
十一番街というのは貧困層の者たちが集まってできている街だ。言わば、スラム街である。オルチェはそこから一番街へと侵入すると宣言した。時間はかかるが、自分たちにとってはこれがもっとも安全だという。
「十一番街から九番街を通り、八番、十番街を駆け抜けて、一番街に入るぞ」
「わかりました」
二人が早速、警備が手薄な十一番街へと向かおうとするのだが――。
オルチェはどこか背後を気にしているようだった。そんな様子にフレイヴは「もしかして?」と愁眉を見せる。ポケットに仕舞い込んだ紙切れを服の上から触れた。もちろん、そのもしかしてでもなく、まさかでもない。そこに嫌な現実が突きつけられただけだった。
「こっち側にも張っていやがったか。バックヴォーンのやつはァ!」
悠長にのんびりと歩いている暇なんてない。戦わずとも、逃げることは可能だ。なぜならば、ここは入り組んだ都市。大通りだけならず、間道や路地はたくさん存在する。特にスラム街ならばなおさら。今にも崩れそうな家というよりも小屋が立ち並んでいる。木材や釘だけではなく、布状の物で覆ったようなテントを家にしている者だって。なんならば、そこに座っている地面自体が家であるかのように寝転がっている輩もいる。そういう人たちに紛れ込むようにして二人は逃げるのだが、追手は逃がさない。逃がそうとしない。逃がしてくれない。是が非でも。関係のない人たちを勝手に巻き添えにしながら。
後ろから聞こえてくる断末魔にフレイヴは眉を一つ動かさずに足だけを動かしていくのだった。




