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落ち着いたか、と言われて頷いた。フレイヴとオルチェは今、白昼夢の村から少し離れた場所にいた。フレイヴはカムラが連れ去られてしまって、落ち着きがないように見える。そのため、オルチェが制している状態だった。当たり前だ。怪我をしているのだから。それでも彼女を早く助けたいとでも思っているのだろう。「どこへ行ったんですかね」と頻りに辺りを見渡していた。
「あの人たちがバックヴォーンさんの手下なら七番街か」
「いや、そこじゃないだろうな。考えられる場所は少し違う」
「だったら、教えてください」
そうは言っても、オルチェは教えようとはしなかった。もちろん、フレイヴの暴走もあるから。気になっていた。なぜに、唐突に「ぼくは殺人鬼だ」と宣言したのか。気になって仕方がない。だから「条件がある」と取引しようと言ってくる。
「お前に訊きたいことがある。それで俺が満足したら教えてやる」
「……いいでしょう」
あまり好ましいと思わない様子でフレイヴは承諾する。そして、オルチェは気になっていた殺人鬼発言について問い質した。どうして自分は殺人鬼だと言ったのか。なぜにナズーは自分たちに助けを乞うていたのか。それらの質問には簡潔に「人間だからですよ」と答えた。
「さあ、答えましたよ。満足したでしょう? あの人の居場所を教えてください」
「誰がそんな適当な答えで満足するか。意味がわからん」
「…………」
早く行きたい者、答えを知りたい者は相容れないようだ。フレイヴは珍しくオルチェを睨んでいた。ややあって、仕方ないとでも思ったのか、重たそうに口を開く。
「ぼく、なんで人間がナズーになるのかわかったのかもしれません」
「わかった?」
「はい、人がナズーになるとき、心の中に溜め込んでいた負の感情が収まりきれなくなるからだと思ったんです」
「あたしを所望しているって……!?」
そのままの意味で捉えてもいいのだろうか。ケレントは神様の日記を持っている人物が自分を所望していると言っていた。それはつまり、魔王は自分が欲しいと思っている? なぜに? 理由が思い浮かばなかった。カムラと魔王は同等の存在。そう聞いたことははっきりと覚えている。自分が自分を欲しがるのはおかしな話ではないだろうか。
「訊きたいことはそれだけかね」
そう言ってくるケレントは早くこの場から立ち去りたいと思っているようだった。だが、待て。話は――訊きたいことが増えた。
「待ってよ、なんで魔王はあたしなんかを?」
「ほう、きみは彼のことを魔王と呼んでいるのか。まあ、魔王というに相応しい人物なのかもしれないが」
「あんたは会ったことがあるの?」
「もちろん」
暗闇の中だというのに、ケレントがどのような表情をしているかわかっている気分だった。彼は自身が優位な立場であることを再確認したかのように「それは引っかけかね?」と訊いてくる。
「きみは魔王に会ったことがあるんだろう? 私を嵌めようと思っているのかい?」
「あたしが……魔王に会ったことがある?」
いや、可能性としてはそうだろう。自分と魔王が同等の存在であるならば。だが、そのことをケレントに言ったところで「そう」という一言で終わる。もっと、魔王について訊き出さないと。カムラが色々訊ねようとするのだが、「それじゃあ」と今度こそこの場から立ち去ろうとする。
「ちょっと、待って! まだ訊きたいことがあるんだけど!」
「いやいや、これでも私は忙しい身でね。訊きたいことがあるならば、今度魔王がきみを引き取りに来るからそのときに訊けばいいじゃないか」
ケレントは言うだけ言うと、カムラを残して行ってしまうのだった。




