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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第十四章 人殺しと魔王◆
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163ページ

 カムラは一度死んだくらいでどうということはない。『また生き返る』だけだ。記憶を持ったまま、目的を達成するまでは。だからこそ、胸を貫かれたときは驚いた。終わった、と目を閉じれば――また生き返ったのか、と冷静になれる。それだから死ぬのが怖いと思う。


「どこだ、ここ……」


 ゆっくりと起き上がったカムラは辺りを見渡す。檻のような場所に入れられているようだ。牢屋ではない。なんというか――。


「鳥かごっぽい」


 起き上がって気付いた。足元の床が僅かに揺れているのだ。なんだか、しっかりと足を地に着けていない気分。檻も人一人が入るくらい。揺れる度にギイギイとうるさい。おそらくはこの檻が宙に浮いているからか。だから、鳥かごだなんてたとえができるのだろう。とにかく、出なければ。そう考えた。鏡を見なければわからないが、まだフレイヴたちの知っている『カムラ』としての姿のはずだ。できることならば、そうでありたい。どのようにしたら、鍵を開けられるだろうか。扉はどこ? 自分を囲うようにしてある鉄格子を見渡した。ぐるぐると目を動かしても――入口はない。というか、暗くて見づらい。本当にここはどこなんだ? ウルバとウルノがケレントの手下であることは判明した。とあるならば、近くにケレントがいる可能性だってある。あの七番街の廃墟にいた男ではなく、オルチェが言っていたじじいとやらが。


「クソッ! あぁ、もぉ!」


 逃げ出せない檻。自分が珍獣になった気分。見世物じゃねぇぞ、こら。


 どうにか強引に脱出しようと試みるカムラ。鉄格子を掴んで揺らした。檻ごと揺れた。ちょっと不快感になった。嘆く。混乱が頭にあるせいで、上手く脳の処理ができない。考えられない。とにかく逃げなければ、という思いばかりが浮かんでくる。


「どうすっかな……」


 そうため息混じりに言ったときだった。


「人間じゃないね」


 明らかな高年齢男性の声。こいつは――!


 カムラの前に現れた誰か。暗くて顔はわからないが、声だけ聞いてもわかる。じじい――失敬。老人の声だ。


「あんたがバックヴォーン?」


「お嬢さんがいくつかは知らないけれども、年上には言葉遣いを考えた方が身のためだ」


「だから何って話。そっちこそ人の話を聞け。お前はケレント・バックヴォーンか」


 老人らしき人物は諦めたようにして「そうだ」と答えた。途端にゆっくりとした足取りでどこかへと行こうとする。待て、ここできちんとした話を聞かずにいられるか。カムラはケレントを逃がすまいとして、呼び止めた。足音は止まる。


「あんたの目的は?」


「『神様の日記』を手に入れること」


 当然のように『神様の日記』という言葉が出てきた。やはりケレントはそれを知っていたか。だが、自分を捕まえたとて、手に入れられるものか。今の神様の日記は魔王が持っている。魔王がこんなナズーがいる世界にしたのだから。


「あたし、それは持ってない」


 これで悔しそうにするか。ああ、ここが明るければ、ケレントのご尊顔と共に悔し顔を拝められたのにな。そうカムラが余裕を持っていたのだが、彼は意外な返答をする。


「そりゃあ、そうだろう。別のやつが持っているからな。私は彼とそれを取引をするだけだ」


 この発言にカムラは思いっきり鉄格子にぶつかるようにして「なんだと!?」と男口調で反応を見せた。


「その、持っているやつって……!」


「彼はきみを所望しているんだ」


――もう訳がわからなくなってくる。ああ、頭がパンクしそう。

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