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横腹を剣で貫かれた。初めて経験するような鋭い痛み。傷口が、全身が、指先がビリビリしてくる。これが軍や戦友軍の人たちが味わうような苦しみだろうか。フレイヴはあまりの痛みに立っていられなくなくなるほど。ウルバが剣を引き抜く。その反動で倒れそうになった。
ウルバはカムラの体を弾いて、邪魔だと言う。退いていろ。こいつの最期は俺がやってやる。そう言っているような気がして。だが、今のカムラには何もできない。よろめくことしかできない。このまま、フレイヴが死に逝くのを黙って見ているしかないのか。
――いや、死なせねぇよ。お前は別だが。
目にも止まらぬ速さの何かが飛んできた。それを勘だけで弾こうとするウルバであったが、それの方が力は強かったらしい。右手の剣が飛んでいってしまう。誰が何をしたかはすぐにわかった。オルチェだ。だが、彼はウルノと戦っており、こちらの方に来ることはできそうにないようだ。フレイヴが危険だったから、一時的に助けた。そう見える。だとしても、こちらが有利であることには変わりない。この子どもを始末しづらいならば、後回しにすればいい。見ろ、腹を突いただけで今にも倒れそうだ。こっちのカムラとやらは強くない存在だ。そこら辺にいるような動物とさして変わりはない。無視して、あの戦うことが面倒な男を片付ければいいだろう。
ウルバは弾かれた剣を拾い上げると、そのままウルノもとへと加勢に向かった。これでオルチェは更に悪戦を強いられることだろう。それこそカムラは少しだけありがたいと思っていた。彼女は人間の姿に戻ると、苦しそうにしているフレイヴに駆け寄る。
「大丈夫?」
心配そうに傷を目にやる。カムラの質問にフレイヴは小さく頷いた。だが、大丈夫なはずはない。そう思う。この世界は自分が知っているようで知らない世界であること。自分にとって当たり前がありえない方向に向かっていっているようだから――フレイヴにはその剣を渡したのも同然。であるが――前から思っていたことがある。どこかおかしいということ。これも魔王の影響なのか。本来ならば、その剣はただ相手を傷付けるだけの代物ではなかったはずなのに。頭の中にはこれまでの記憶がないというわけではない。不可解な点が焦りや不安を煽っているようだ。
ともかく、止血をしないと。カムラは自身の服の切れ端を千切ろうとするのだが、フレイヴは剣を杖代わりにして立ち上がった。相当苦しいのか、息が荒いように見える。
「フレイヴ?」
苦戦しているオルチェの手助けに行こうとしていた。あまり動かないような体を引きずりながら。横腹の傷口から血を滴らせながら。フレイヴはこう言うのだ。
「ぼくは人殺しの鬼だ」と。




