156ページ
嫌な場所で、嫌な思いをし、嫌なことになってしまった。国から立ち入りを禁止されていた場所に自分たち民間人がいるからだ。それに、とフレイヴは馬の姿のカムラを見た。彼女は人の姿に戻ることはせず、自分の後ろへと逃げ込む。オルチェは怪訝そうに女性軍人――ウルノを見ていた。
その視線に気付いたウルノは「また会ったね」とにっこり笑みを浮かべる。その笑顔の下には何が隠れていることやら。カムラを守るようにしているフレイヴが眉根を寄せる。なんせ、首都で会った偽軍人らしき人物がそこにいるのだから。ということは、隣にいる女性軍人も偽者。ケレントの部下か。
不審そうに二人を見るフレイヴ。それを一瞥するオルチェは何かに気付いたようで――。
「これはこれは、首都以来ですね。どうです? あれからナズーの親玉は倒せましたか?」
「あははっ、そうそう簡単に倒せないって。あなたたちも知っているでしょ?」
「おうっ、こいつはぁ一本取られましたね」
「ざんねーん。……ところで、なんで丁寧な口調? やましいことでもあったの?」
慎重になり過ぎた。オルチェは表情をひきつらせるしかない。こういうとき、アルフレッドがいてくれたら何かしら違った対処ができたかもしれないのに。
「まあ、やましいことはあるよねぇ」
そう言うウルノは「ねっ、ウルバ」と偽者軍人――ウルバにそう声をかけた。
「そこの茶髪のきみの後ろに隠れている珍しい動物は何かな?」
それだけで逃げ出したい気持ちに駆られる。
「ああ、そうだな」
ウルノの発言にウルバがにやにやと反応示し出した。これは誰だろうが誤魔化しきれないかもしれない。いや、しれないというのはおかしかった。誤魔化せない。断言だ。
「そこの犯罪者二人、取引をしないか」
「嫌だって――」
「言えば、俺たちがどういう人間かわかっているよな?」
自分たちの服装を見せびらかしてくる二人。それに、ここがどういう場所なのかも理解しているはず。ウルバがフレイヴに対して意地の悪い笑みを見せてきた。これに彼は強く歯噛みをする。
「理解してる? ここで優勢的な立場は私たち」
取引の内容はわかりきっていた。特にフレイヴ。
「お前たちがここにいたことは黙ってやるし、逃がしてやる」
首都で聞いたような条件だ、と頬に冷や汗が垂れる。時間が遅く過ぎるような気がしてたまらない。ウルバの「だから」という続けて出てくるはずの言葉がなかなか出てこないようだった。
「あの赤い本をこちらに寄こせ」
――最悪。




