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互いに助けを求めていたのだが、その双方が出会った。だが、自分たちは絶望の淵に立たされているということに一同は気付いてしまっていた。
「過去を変えても、誰かは気付いている」
見た目は普通のナズー。だが、見たことのあるナズーは人の言葉をしゃべらないのが当然。ましてやこちらの様子を窺っている雰囲気を出すなんて。こいつらは理性のない存在であるのが当然だというのに。
「おねえさんとの、やくそく!」
もう一体も特異なナズーであることには間違いないだろう。それでも人の言葉を話し、普通のナズーと同様に襲いかかってくる。ほら! アルフレッドさん、よそ見は危険ですよ!
大口ナズーの攻撃からアルフレッドをカムラはかろうじて救い出した。彼女は今、見た目が光る馬の姿になっているようで、自身の背に彼を乗せた。人の身体能力の限界があることぐらい知っている。だからこそ、守らなければ。オルチェより、フレイヴより、カムラよりアルフレッドは自他共に弱者であることを存じている。
「落ちないでよ」
「誰が落ちるもんか!」
そうそう何度も攻撃を回避することができないと申し立てるアルフレッド。その言い分は一同が共感するものでもあった。それじゃあ、しっかり捕まっていなよ、とカムラが口を開こうとしたときだった。身構えて、こちらの様子を窺っている人型ナズーは「そうだね」と大口ナズーに対して言い出したのだ。その言葉に誰もが肩を強張らせる。こいつは何を肯定している?
次の言葉を待っていると、大口ナズーは子どもの声で言い出した。
「やくそく、したもん。おれとおねえさん。ずっと、ずっとわすれてないもん。あいつとおれはちがうもん」
「うんうん、言いたいことわかるよ。約束は大事だもんねぇ」
「うん」
話の内容が気になり過ぎて、動けない。ナズーたちが会話をしているだと!? こんな事例は今まであったのだろうか。否、あるわけがない、とオルチェは眉をひそめた。彼らの高度な意思伝達はありえないはずだから。人の言葉を理解するということも信じがたい。というか、その非現実的なことが目の前で繰り広げられているのだ。疑うよりも、信じることしかできないだろう。
「だから、おれ、おねえさんのきおくからひきずりだしてあげるよ」
記憶から引きずり出す。そういう発言を大口ナズーがすると、直接的――実際に脳みそを引きずり出しそうな気がしてたまらなかった。これにカムラは多大な冷や汗を掻いた気分になる。そう言うそれに人型――正気を保った状態のナズーは大きく頷く。なんだか、人間臭く見えるから奇妙な光景だ。
「そうだね。それが一番だね。だけれども、人の記憶を思い出させるという行為は実に難しいことなんだよ。その記憶というのは砂漠で一粒の砂を取るということに近いようなものだから……地道にやっていくしかないかな」
元調査員ナズーが大口ナズーに説明をしているようだが、理解不能のようだ。どうにも、まどろっこしくて。面倒そうで。だったらもう、直接的に引きずり出したが早いと思うな。
カムラの直感が告げた。避けろ、と。
「おっさん!」
しっかり捕まっていろ、と言おうとする前に、大口ナズーの巨大な口はすぐそこまで迫っていた。こればかりは口を動かすよりも、足を動かせ。だから、カムラは言わなかった。先ほども言ったし。アルフレッドは自分の背から落ちる気なんてないって言っていたし。
それなのにである。
「あ」
と声を上げるのはすでに遅い状態。アルフレッドは大口ナズーに食べられてしまったのだった。




