152ページ
フレイヴには動揺が見えていた。もちろん、カムラだって。正体を知っていたはずなのに、衝撃的過ぎたから。それだからこそ、二人は大口ナズーから逃げ出す。斜面を全速力で駆けながら。その後ろからはナズーが迫りきているのが見えていた。
「どこに逃げる!?」
戦うということよりも、逃げるを優先するらしい。フレイヴがそう訊ねるが、カムラは「知らない」と答えるだけ。いや、「知らない」という言い方には語弊がある。彼女が言いたいのは「わからない」である。どこへ逃げたらいいのかわからないのである。
消失の町とは違った地形の場所。以前の戦い方が通用することはない。だからこそ、戦いの知者であるオルチェを探さねば。自分たちのストッパー役にして、一番の大人的な考え方を持つアルフレッドの意見を訊かねば。
「おねえさん!」
大口ナズーは大声でカムラのことを叫びながら追いかけてきている。なんなのだ、このナズーは。なんなのだ、あの男の子は。それでも元人間なのかと疑わしくなる。
走りに走って、荒れ地を駆け抜ける。高い草が生えていて、視界は不良。急激に木の幹が現れたら回避のしようがない。つまり、カムラのこの逃げ走りはほぼ直感と言っても正しかった。自分たちが逃げ先に何があるのかなんてわからない。それでも走った。とにかく走った。それだけのことしか考えられなかった。そうしていると、回避不能とも呼べる木の幹が二人の目の前に! 止まらない脚。避けられない自身の回避能力。もうぶつかるしかなかった。木が折れるほど勢いよくぶつかり、二人が転げるようにして落ちた場所は――。
「お前らっ!?」
偶然にもオルチェとアルフレッドがいる広い場所だった。いや、二人だけと言うのは間違いだった。彼らの目の前にもナズーはいるのだから。
「なっ、こっちにも!?」
「はあ? それはどういう――」
カムラの発言にアルフレッドがすぐさま反応した。どういう意味なのか、という質問をする途中で、彼女の言葉を瞬時に理解する。思わず「嘘だろ」と顔を引きつらせる。
「どうするんだよ、これは……」
広場にいたナズーは知性と理性を持った、ある意味で強い個体。もう一方で、フレイヴたちを追いかけてこちらへとやってくるのは感情的に行動をする個体。双方ともに厄介な存在。それらを相手にするのがこの四人である。
「過去を変えても、誰かは気付いている」
「おねえさんとの、やくそく!」
この局面を四人はどう切り抜けるのだろうか。




