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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第十三章 約束とカムラの記憶◆
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151ページ

 カムラとの約束を覚えている。そう言う男の子に対して、彼女はというと――。


「はあ? えっ? ちょっと待って。あたし、本当にあんたのこと知らないんだけど」


 何も知らないし、身に覚えがないらしい。その表情から察するに嘘ではないようだった。そう言えば、である。消失の町でも思っていたことだが、この小さな男の子はカムラを誰と思って慕っているのだろうか。妙に人懐っこい。特に彼女に対して。思わず、二人は同時に――。


「きみ(あんた)は誰?」


 率直にそう言った。


 これは決して悪気があって言っているわけではない。事実、この子どもを二人は知らないのだ。誰だと訊ねるしかあるまい。訊ねなくとも知っているとはありえないのだから。今の彼らにとって最大の疑問。それをぶつけると、男の子は想定外とでも言うような顔付きを見せてきた。何もおかしな質問ではないはずなのに。どこか心が痛むような気がして――彼は目に涙を溜めて、泣き出した。その場に男の子の泣き声が響き渡る。なぜに泣いてしまったのかはわからない。ただ単に誰なのかを訊ねただけなのに。


 男の子は泣きじゃくりながら「ひどいよ」と言う。


「ひどいよぉ、ひどいよぉ! おれ、おねえさん……おねえさんとのやくそく! まもって……まもってたのにっ!」


「泣かないで。もしかしたら、カムラ……冗談は可哀想だろ?」


 カムラが嘘をついていないとは知っている。だが、子どもが泣いてしまうほどだ。本当なのかもしれない。そう思ってフレイヴが彼女にそう言うが――「冗談じゃない」と戸惑いを見せた。


「こんなときに、あたしはくだらない嘘をつかない」


「でも、この子はカムラを知っているんだろ?」


「それでも、あたしはこの子を知らない。あたしと誰かを勘違いしているとかしか思えない」


 そうであって欲しい。カムラが男の子と同じ目線に合わせるが、彼は「ちがうもん」と大きく首を横に振る。


「おねえさんとおれ、ちゃんと……ちゃんと、やくそくしたもんっ! うそじゃないもん!」


 これにはどうしようもないカムラが眉根を寄せると同時に、とても嫌な予感がした。どこからともなく気味の悪い、冷たい風が吹き始めたのだから。何かと確かめている暇もなく――。


「カムラっ!」


 危ない、とフレイヴが自身の方にカムラを寄せた。その直後、あれだけ泣きじゃくっていた子どもは以前に見た大口ナズーへと変貌してしまったのだから。


「おねえさんとおれ、やくそくしたもんっ!」


 あまりにも唐突過ぎて、二人は――カムラは騎馬の姿へとなり、フレイヴを乗せて丘から逃げ出すのだった。

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