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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第十三章 約束とカムラの記憶◆
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150ページ

 何かが小さく爆発したような音が聞こえた。村の中にいる小動物たちもそれに気付いたようで、聞こえた方角とは違う方向へと逃げ出しているではないか。気にはなる。しかし、目の前にいる小さな男の子の問題もある。フレイヴは不安ながらも「知らないの?」と訊ねた。


「ナズーだよ。真っ黒で大きなバケモノ。見たことはない?」


「ないよ」


 相変わらず、カムラには懐いているようで、彼女の服の裾を握っていた。それに彼女はどこか嫌々としている。あまり子どもが好きではないのかもしれない。


 ナズーを知らない、と言われてフレイヴは別の質問に切り替えてみた。


「それじゃあ、きみはどうしてここにいるの?」


 そう問い質すと、男の子は一度だけカムラの方を見たかと思えば、こちらを見た。


「えっとねぇ、おれ、ゆめをみてるんだ」


「夢?」


「そ、ゆめ」


 この男の子に質問をすればするほど、理解不能な回答が待っているだけだった。なぜに普通に起きているはずなのに「夢を見ている」だなんて言うのだろうか。おかしな話だ。


「夢って、寝ないと見られないんじゃないの?」


 それとも、眠っているときの夢ではなく、将来を越した憧れなのだろうか。男の子は「みれるよ」と答えてくれた。


「おれ、ゆめをみれるよ。ずっとみつづけてるんだ」


 なんてそっとカムラの手を握ると「まだまださめそうにもないゆめをね」と付け足し、にこっと可愛らしい笑みを浮かべた。手を握られた彼女は片眉を上げながら男の子を見る。何か言いたげではあるが、黙っているようだ。ややあって、手を握っていた彼は「あったかいね」とカムラを見た。


「おねえさん、てがあったかい」


「……ああ、そう。で?」


 冷たいカムラ。確かにこの子どもは先日の大口ナズーである可能性はあるにしても――もうちょっと、小さな子どもに対する優しさはないのか。こうして、独りで生きてきたような子であるのに。フレイヴは男の子に聞こえない音量で「カムラ」と眉根を寄せた。


「もうちょっと、優しい言い方はないの? いくらなんでも可哀想だよ」


「って、言っても。こいつ、この前のナズーでしょ? 違う?」


「だろうけどさ……」


 そんな二人のひそひそ話に興味がないのか、男の子は「だから」と言葉を続けた。


「おれ、やくそくをおぼえてるよ」


「約束?」


 それはどんな約束なのか。二人が顔を見合わせて訊ねようとするが、男の子は彼らの言葉を遮ってこう言ったのだ。


「ね、おねえさんもそぉでしょ?」


 どうやらこの男の子、カムラと何かしらの約束をしたらしい。フレイヴが彼女を見ると、困惑の表情を浮かべるカムラがいるだけだった。

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