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何かが小さく爆発したような音が聞こえた。村の中にいる小動物たちもそれに気付いたようで、聞こえた方角とは違う方向へと逃げ出しているではないか。気にはなる。しかし、目の前にいる小さな男の子の問題もある。フレイヴは不安ながらも「知らないの?」と訊ねた。
「ナズーだよ。真っ黒で大きなバケモノ。見たことはない?」
「ないよ」
相変わらず、カムラには懐いているようで、彼女の服の裾を握っていた。それに彼女はどこか嫌々としている。あまり子どもが好きではないのかもしれない。
ナズーを知らない、と言われてフレイヴは別の質問に切り替えてみた。
「それじゃあ、きみはどうしてここにいるの?」
そう問い質すと、男の子は一度だけカムラの方を見たかと思えば、こちらを見た。
「えっとねぇ、おれ、ゆめをみてるんだ」
「夢?」
「そ、ゆめ」
この男の子に質問をすればするほど、理解不能な回答が待っているだけだった。なぜに普通に起きているはずなのに「夢を見ている」だなんて言うのだろうか。おかしな話だ。
「夢って、寝ないと見られないんじゃないの?」
それとも、眠っているときの夢ではなく、将来を越した憧れなのだろうか。男の子は「みれるよ」と答えてくれた。
「おれ、ゆめをみれるよ。ずっとみつづけてるんだ」
なんてそっとカムラの手を握ると「まだまださめそうにもないゆめをね」と付け足し、にこっと可愛らしい笑みを浮かべた。手を握られた彼女は片眉を上げながら男の子を見る。何か言いたげではあるが、黙っているようだ。ややあって、手を握っていた彼は「あったかいね」とカムラを見た。
「おねえさん、てがあったかい」
「……ああ、そう。で?」
冷たいカムラ。確かにこの子どもは先日の大口ナズーである可能性はあるにしても――もうちょっと、小さな子どもに対する優しさはないのか。こうして、独りで生きてきたような子であるのに。フレイヴは男の子に聞こえない音量で「カムラ」と眉根を寄せた。
「もうちょっと、優しい言い方はないの? いくらなんでも可哀想だよ」
「って、言っても。こいつ、この前のナズーでしょ? 違う?」
「だろうけどさ……」
そんな二人のひそひそ話に興味がないのか、男の子は「だから」と言葉を続けた。
「おれ、やくそくをおぼえてるよ」
「約束?」
それはどんな約束なのか。二人が顔を見合わせて訊ねようとするが、男の子は彼らの言葉を遮ってこう言ったのだ。
「ね、おねえさんもそぉでしょ?」
どうやらこの男の子、カムラと何かしらの約束をしたらしい。フレイヴが彼女を見ると、困惑の表情を浮かべるカムラがいるだけだった。




