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本当に自分の人生ってろくなことがない。そう、アルフレッドは斜面を駆けながら後ろを見た。半歩後ろにはオルチェが。その数メートル後ろにはナズーが。
このナズー、ただのナズーではない。先ほどまで話をしていた国の調査員が、ナズーになったのである。しかも、こいつはそこら辺にいるようなバケモノではない。なぜならば、知能が高いから。撒いて逃げようとしていても、回り込まれてすぐに追い着かれてしまうのだ。それならば、どうしてこちらを追いかけてくるのかわからない。人としての心が残っているならば、自分たちを攻撃してくる理由がないはずなのに。いや、先ほど対話をしていたが、話が噛み合っていなかった。こいつは理性のあるナズーではない? であっても、木々を破壊することはしていない? むしろ、避けている? これはどっちなんだ!?
オルチェは懐から拳銃を取り出して、一発だけバケモノに発砲した。一瞬でその場に、微かに火薬臭がするが、そんなのに構っている暇はない。
「当たらん!」
当然だ。走り逃げながら撃ったのだから。焦点は合わないに決まっている。
「どうするんだ、これっ!」
オルチェが頼みの綱だというアルフレッドは脂汗を掻きながら声を上げる。その質問、どうにかすると考えながら安全な場所へと誘導する彼にとって苛立たせていた。わかっているんだよ、そんなこたぁ。どうするのかって、ンなの俺が訊きたい。なんて文句を言っている暇があるならば、足を動かせ。ただひたすらに逃げろ。確かに自分は戦友軍であり、単独でナズーを倒すこともできる。だが、それは相手が一体のときだけに限る。視界が良好な環境であればの話だが。複数は不可能。様々な都合のいい条件が折り重なって、ようやく倒すことができるのだ。それがオルチェという男。いや、誰だってそうだ。戦友軍の人間で、単独で複数のナズーを倒すなんてありえないのだから。
しかしながら、この場に現れているナズーは一体だ。それでどうにかなる、と思ったら大間違いだからな。恐れているのだ。未知のナズーとの戦いに。こいつが正気のあるナズーだとわかっているから。ここまで頭のいいバケモノは危険だ。つーか、絶対俺より頭がいいだろとは言わせないけど。もしも、戦うとすれば――どこか広い場所へと出なければならない。ぶっちゃけると、フレイヴたちに助けを求めているに近い。上からでも見えるような場所は――。
ここでアルフレッドが「おい」と提案を持ちかけてくる。
「そう言えば、村の南の方に広場があったはずだ! 看板にそう書いてあった!」
「よしっ、おじさん、そこまで持ち堪えてくれよ!」
そこならば、流石のフレイヴたちも異変に気付くだろう。この村で出没するナズーならば、一体なはずだから。




