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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第十三章 約束とカムラの記憶◆
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148ページ

 さて、国の調査員はどのような反応を見せるだろうか。彼にオルチェは矛盾点を突きつけたのだから。本性を露わにして、フレイヴからカムラを奪い取る気か?


 二人は調査員の次の言行を待っていると――彼は空を見上げた。空は彼と同じ薄い青色をして、小さな雲が流れている。ただ時間が過ぎていくだけ。沈黙の時間が。そうして、どれだけの時間が経ったことか。実際にはそこまで経っていないが、気になって仕方がないアルフレッドが「あんた」と意を決して口にした。


「一体何者なんだ?」


 ただのおじさんではないことは確かだ。だが、それ以上のことは知らない。空を見上げていた調査員は二人の方へと向き直ると悲しそうな顔を見せながら、口を開いた。


「帰りを待ち侘びる者は老い死に。帰ろうとする者は帰り道を知らず」


「…………」


「あなたたちは知っていますか? そういう風にして孤独に生きてきた者の心を。たった独りで世界を生きねばならない悲しみを」


 語り出す調査員に二人は眉根を寄せた。意図がわからないのは、今度はこちらの番のようである。何が言いたいのだろうか。帰りを待っている者は死んで、帰ろうとする者は帰り道を知らない? どういうことだ?


「あんたはそうだって言うのか?」


 アルフレッドはそう反応するしかなかった。いや、それ以外でどう反応を見せろと? 二人が調査員の次の言葉を待っていると、周りが奇妙な音に包まれた。何かが折れるような音。気味が悪い。そんな不気味な最中でも「知っていますか?」と平然としていた。それからだ。異変というものが訪れたのは。


 先ほどまで晴れていたというのに。天気がよかったのに。急に暗くなってきたのだ。これから大雨が降りそうだとか、そういう次元ではない。もっと別のもの――恐ろしいものがやってきそうな感じ。


「おじさん……」


 人の勘はばかにできない。オルチェはアルフレッドに声をかけた。彼を避難させる気なのである。自分が気を引いているから、フレイヴを呼んできてくれ。その合図を示そうとするが――何かが折れるような音はより一層激しくなる。バキバキバキバキバキとそれがバキバキ当然バキバキバキであるかのバキバキバキバキバキように。


 これまでよりも、一段と大きな音が聞こえると、調査員の体に変化があった。どこからどう見ても普通の中肉中背の体はみるみると大きくなり、服を破き――肌は黒く変化する。


「過去を変えてしまうと、矛盾が起きるんですよ。それに愚か者は気付かなかった」


 二人の眼前にいたのはもう調査員ではなかった。そこにいたのはどこからどう見ても普通のナズーだったのだ。

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