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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第十三章 約束とカムラの記憶◆
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147ページ

「おねえさん!」


 消失の町の夜を思い出した。それでも二人に構わず、小さな男の子はカムラに抱き着いてきた。この子は? 声に聞き覚えがある。だが、あのときはフレイヴが倒したはず。体が消失したはず。消失!? ちょっと待て!


 おかしな話だ。これまでにおいて、ナズーが倒されたらば、死体は残るはずのに。それこそ、人が死んだときと同じように。体が消えるなんてありえないし、聞いたことのない話である。


「き、きみっ!」


 声が上ずる。それでも男の子は「なに?」と反応を見せてくれた。こちらを見てくる無垢な表情。しかし、不審点が見つかった。夜とは違って、今は昼間だからわかった話。


――服がボロボロ?


 それだけではない。体中が泥だらけ。髪の毛は無造作にグシャグシャで伸びっぱなしなのだ。そして、カムラが言っていた靴なし。これではまるで、独りで生きてきたとでも言っているようではないか。この男の子に対する疑問点を解消したい。そう考えたフレイヴは「いくつか訊いていい?」と目線に合わせるようにして屈んだ。これに「いいよ」とにっこり笑ってくれた。


「なにがしりたい?」


「きみのお父さん、お母さんは?」


「いないよ」


「誰かと一緒にきた?」


「ううん」


「名前は?」


「ないよ」


 何を訊いても否定的なことばかり。だが、質問がまだ残っている。フレイヴはカムラの方を見ると、再び男の子の方を見た。そして、次に知りたい疑問をぶつける。


「きみは、前にぼくたちと会って……ナズーっていうバケモノに襲われなかった?」


 知りたいのだ。この男の子の正体を。フレイヴの濃い青色の目と男の子の薄くて青色の目が交じったとき、彼は小さく首を傾げた。


「なずー? それ、なぁに?」


 この子どもはフレイヴの質問の意味を理解できないらしい。

『この先“嘆きの高台”』という看板を横切り、オルチェとアルフレッドは、高台にいる一人の人間――男に声をかけた。その声と共にこちらを見てきたのは、アルフレッドにとって三度目となる国の調査員である。彼は気さくに「これは、これは」とにこやかに頭を下げた。


「またお会いしましたね。そちらはお友達ですか」


「まあな。ここで調査をしているのか?」


「ええ、国の命ですから」


 調査員がそう答えると、オルチェが一歩前に踏み出して「訊いていいか?」と片眉を上げた。これに「はい」と答えてくれる。


「何でも答えましょう」


「国の命令なら、なんで俺たちのことを全くあやしまないんだ?」


 オルチェの設問に調査員は、質問の意図がわからないようで「どういう意味ですか?」と反問してくる。


「確かに私は新王国の命でこの町の調査をしていますが、どうしてあなた方をあやしまなければならないんですか?」


「ここが一般立ち入り禁止区域になっているからだよ」


 別に軍の増援を呼ばれたって構わなかった。その前に調査員の正体を暴きたかったのだから。先ほど、調査員は何と言った? おかしなことを言わなかっただろうか?


【確かに私は新王国の命でこの町の調査をしていますが、どうしてあなた方をあやしまなければならないんですか?】


 ここはかつて『白昼夢の村』があり、地図から抹消された場所だ。『町』ではない。

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