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ああ、クソッ、と顔をしかめるのはオルチェだった。どうやら、草が足に引っかかって転倒しそうになったらしい。そんな彼を半歩遅れて歩いていたアルフレッドは笑いそうになる。ちらりとこちらを見ていた気がするが、それは笑っていないかどうかの確認だろう。
「ここ、他のところと比べて鬱蒼としているなぁ」
「あぁ、ヤダヤダ。これだから、田舎は嫌いだ」
「そうは言っても、逃げる場所には最適だと思わないか? 果物は腐るほど生い茂っているし。ナズーに関しては例外だけれども」
「俺、指名手配されてねぇし」
一緒にしないでくれ、と苦笑いをする。そうしていると、オルチェは思い出したように「そう言えばさ」とアルフレッドに一本タバコを差し出した。それを受け取りながら「なんだ」そう返す。
「何かを語ってくれるのか」
「語るっつーか、フレイヴたちの前では黙っておいた方がいいかもしれないけど……」
どこかためらいがちなオルチェ。そこがどこか珍しいな、とアルフレッドは思う。
「会ったこともないから憶測でしか言えないんだけれども、その調査員の人って本当に王国から命令を受けているのか?」
そう言うオルチェにアルフレッドは「どういう意味だ?」とタバコに火をつけた。
「受けてなきゃ、ナズーが出る場所に丸腰で……」
ここで言葉が詰まった。あれ、そもそもあの調査員って武器持っていなかったよね、と。商人や旅人といった軍人ではない者でさえも、護身として持ち歩くのは法律に反しない程度の何かしらの武器だ。アルフレッドが覚えているのは、物腰柔らかそうなおじさん。旅をするための御用セットが入っているであろう鞄は見掛けた。何かを調査し、それを記入する書類なども見掛けた。しばらくの間、家に帰らないという雰囲気はわかっていた。
「三人が島自治区で会ったのって、おかしな話じゃないか?」
島自治区は新王国の領土ではない。独立の国が管理している島であり、島内へと入れるのは一部の人間のみ。それも自国の人間だけだ。他国の人間が入るなんて言語道断のはず。
「いくら国からの指示だとしても、あの島だけはありえないだろ」
オルチェからの矛盾を聞いて、国の調査員に対する疑問が膨れ上がる。疑心に思っていることはいくらでもあったはずだ。それが、時が経つにつれて――自分たちの安全のことばかりが当たり前のようになっていって、忘れていた。
「じゃあ、あの人が何者なのか想像つくか?」
「なわけねぇだろ。見たことのないやつをどう想像する?」
アルフレッドの質問に対して、思わず顔が引きつるオルチェはこれから向かう先――高台の方を見た。そこから見えるのは一人の人間である。
「ただ、言えることは……ただの人間ではないことだよな」




