145ページ
あちらを見ても荒れた緑。こちらを見ても荒れた緑。一面の荒れた緑の中を歩くのはフレイヴとカムラだ。彼女はオルチェと離れたことがよほど嬉しいのか、拾った木の棒を振り回しながら鼻歌を歌っていた。
「上機嫌だね」
「ふふん、まあね。……それにしても、ここら辺ナズーの気配がしないね。いや、気配を辿ることとかできないけど」
「鳥の鳴き声とかしか聞こえないよね」
それだからこそ、思い出す。失ってしまった故郷を。
「ここの人たちは羨ましいな」
なんて呟きながら二人が向かう先はこの村にある丘――白昼夢の丘である。高いところからならば、何かしら見つかるかもしれない。そう思ってである。彼らは実際にその場所へと向かうと、村全体を見渡した。土地自体は荒れてはいるものの、遠目で見れば誰かが住んでいるとでも言えるような場所と思える。それが余計に羨ましく思う中、この丘の正反対側にある高台に目をやった。今頃、あちらにはオルチェとアルフレッドがいるだろう。
オルチェの考えはこうだ。この村は元が緑に囲まれ過ぎて、死角が多い。そのため、高いところから探すという考えである。単純ではあるが、この方法以外で自分たちは捜索法を知らない。
「あっち側、おっさんたち見える?」
「うーん、流石にぼくはそこまで目がいいわけじゃないなぁ」
「でも、ナズーなら一発でわかるね。体が黒だもん」
「そうだね。どの個体も黒色だった」
そこでフレイヴはふと思い出す。そう言えば、という感覚ではあるが、彼は「カムラ」と見た。
「この前の子ども……人の姿をしていたときの色は何色だったか、覚えている?」
ちょっと何を言っているのかわからない質問にカムラは鼻白んだ。思わず失笑をする。
「色って。いやいや、暗くてわからないよ。普通に人間の子どもだったと思うけどね」
「そっか、そうだよね。カムラ、その子のこと裸足だってわかっていたから思ったんだ。足でも当たってたのかな?」
「いや、当たっては……」
ここで自分の記憶がおかしいことに気付いた。確かにあの子どもは自分に抱き着いてきた。それは覚えている。それだけだった。遊ぼう、遊ぼうと言っていた。暗くて、ほぼ見えていない状態だったというのにだ。
――えっ、ちょ、ちょっと待ってよ……?
カムラは必死になってあの晩のことを思い出そうとしていた。いや、思い出さなければならないのだ。どこか矛盾点があるのだから。そのおかしな部分に悩まされていると、後ろの方から物音が聞こえてきた。まさか、ナズーかとそちらの方へと振り返るのだが――。
「なにしてるのぉ?」
茂みの中から現れたのは、小さな男の子だった。




