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村人全員がナズーになったわけではない。ある日、一人の村民がナズーになった。バケモノの噂はもちろん、この村にも届いており、そうなりたくないとでも言うようにして――彼らは我先に、と村を出ていったのだ。今では当然誰も住むことはない廃村。それでも王国軍は立ち入ることを禁じた。これまでの場所において、比較的ナズーが少ない場所と言えるだろう。被害は最小限だったのだから。
「この前の廃町とは違った荒れ方だよな」
元は畑だったであろう場所をオルチェは見る。道との境界線がかろうじてわかるが、どちらとも草木がぼうぼう。手入れしていない証拠だ。もっとも、人が立ち入られないからそうすることができないだろうが。
「向こうじゃ色んな物が散らばっていたしな。ここはそこまで散らかってはいない」
ナズーは人だけでなく、建物すらも破壊する存在だ。村の中を歩いていると、時たま破壊跡の建物は見えるが――すべての建物とは限らない。きちんと家として、まだ人が住めそうな家だってあるのだから。
「ここにナズーがいないって断言できるなら、俺が住んでいたかもな」
一件の壊れていない家を見上げながらアルフレッドは皮肉った。彼の気持ちはわからなくもなかったから。
「というか、軍は立ち入り禁止区域を増やしてどうするつもりだ? このままじゃ、本当に人が住む場所がなくなるぞ」
「新たに町とかでも作るんじゃないの?」
「作って立ち入り禁止してを繰り返してりゃ、いよいよと海上にでも家を建てるか?」
なんてアルフレッドとカムラが雑談をしている一方で、フレイヴは眉間にしわを寄せて村の中を見ていた。そんな彼を見てオルチェは「家を思い出すか?」と訊いてくる。
「ここまで綺麗に残っている場所は珍しいってもんだよ」
「ですね。でも、たかが一体のナズーのためだけに立ち入り禁止をする軍の考えがわからない」
討伐をして、安全であることを確かめて村民を呼び戻せばいいのに。人が住めそうな状態で残っている故郷なんて滅多にないことだろう。ここの村の人たちが羨ましい。そう思うフレイヴ。
「俺もわからんな。というよりも、どうして人間がナズーになるのかがわかっていないようなものだしな」
それに、人間いつナズーになるのかがわからないというのが通説だ。明日の朝になっているかもしれない。すぐになるかもしれない。なんだったらば、こうして考えている間にも――。
「もしかしたら、理性のあるナズーが知っているかもしれませんね」
「可能性は高いな」
それも大事だが、とオルチェは目の前にある空き家を指差して、少し離れた場所にいる二人を呼び寄せた。
「とりあえず、この家を拠点にして探すか?」
そこまで危険性のないような廃村。それだからこそ、四人は二手に分かれて行動をすることにするのだった。




