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我が耳を疑った。先ほどの言葉に声――。
【よるはおれのじかんなんだよ!】
無邪気な声で聴かせてくれたあの言葉。まさかとは疑いたい。大口ナズーはまたしても口を開く。
「おねえさん、あそぼぉ!」
間違いない! このナズーはあの子どもだった!? これに関してオルチェも驚きを隠せないのか、目を丸くしているではないか。
――遊ぼうとか言っていたのは、このことなのか!? ということは、このガキが理性のあるナズー? いや、違う!
なぜならば、ナズーは「あそぼぉ」と口にするだけで、フレイヴに向かって攻撃をし始めたからだ。これが正気を保った状態のナズーであるとは判断が難しい。流石に対一は厳しいに決まっている。現に彼の表情は苦しそうに歪んでいるから。オルチェは助太刀に入らんとして――。
「こっちだ、デカブツ!」
顔の後ろに一発蹴りを加えた。止む攻撃。次の遊び相手はお前だな? 仕向けられた顔。こちらを見てくる視線にオルチェは悪寒がした。これまで対峙してきたナズーとは何かが違う気がするからだ。確かに奇声を上げていたナズーはいる。確かに普通の人よりでかい人型のナズー以外の形をしたバケモノの相手をしたことはある。それでも、ここまで自分が怯むような相手はしたことがなかった。
――いや、俺はこいつを誘導しながら逃げれば問題ない。あとはフレイヴが……!
「おーにさんこちら、手の鳴る方へ!」
――遊びたければ、俺と遊ぼうぜ。死と隣り合わせの遊びでなぁ!
大口ナズーに挑発をするオルチェ。これが引き金となるようにして、それは「あそぼぉ」と嬉しいのか、むかつくのかはわからない。それでも、彼に向かって襲いかかってき始めたのだ。これにより、本気の死と隣り合わせの鬼ごっこが開幕される。オルチェは必死に走って逃げる。ナズーは挑発をしてきた彼を追いかけていた。ひぇ、怖さマックス。
――食われてナズーになるのだけは勘弁だ。だが、フレイヴはここで終わるようなやつではないはず。カムラ女だってそう思っているだろうし、魔王と顔を合わせたとき言われたんだろ? クラッシャーだって。
夜。しかも足場が分からないようなところでの鬼ごっこ。いつ他のナズーを呼び寄せるのかはわからない。
――それでも、俺は囮役だ。生まれながらのな!
自分はクラッシャーの囮役。そう言い聞かせてフレイヴの囮役に買って出たのだ。これからどうするのかはオルチェの体力とフレイヴの判断に委ねられた。このフレイヴが下僕思いの存在であるのを祈るかのようにして。




