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新王国軍が立ち入り気を禁止した町があろうとも、町中の建築物を取り壊すことはないらしい。そのようなことをする予算があるならば、ナズーに対抗しうる武器の開発に回すとか。そんな理由では地図上から消されてしまった町ではなく、地図から忘れられてしまった町という表現が正しいだろう。
そんな新王国軍が考えていることに段々とむかっ腹が立ってくるフレイヴはずっと眉間にしわを寄せていた。これから理性を保ったナズーを捜索するために、地図上から消されてしまった場所を回るのだ。まず彼らが向かう場所は世界で最初にナズーの被害に遭った町――『消失の町』である。どの町よりも早くに消失してしまったため、何百年と人は住んでいない。もはや、町としての面影はなかった。
「かなり昔に捨てられたって感じがするな」
軍の警備範囲を掻い潜り、町中へと入った。どの町並みとも似てはいるが、ナズーに破壊されてそのまま風化された建物ばかりである。コケや植物が生えた石畳の上には破れてボロボロになった飼料袋やら、使い物にならなそうな薪があった。ナズーの気配は今のところ感じられない。
「危険だけれども、ここで過ごすのも悪くはないよな」
「そうだな。ナズーに見つからなければ問題ないだけだしな」
そう、この四人にとってのんびりと過ごせる場所はこのようなナズーが出没するようなところである。そうであっても、ここで文句は言っていられない。仕方がないのだ。一般世間ではフレイヴとアルフレッド、もしくはカムラは新王国軍より指名手配書を各地に張られているのだから。
「なんというか、ここって遺跡って感じがする」
何かしらの手掛かりを探し回りながらカムラはそう言った。それもそうだろう。誰かが住んでいた形跡のある建築物がそのまま残されているだけなのだから。彼らは周りを見渡しながらこうして遺跡という物は生まれるのか、と感傷に浸った。
「遺跡となりゃ、ナズーが寄ってこなければ最高だよな。島のときみたいに」
アルフレッドがそう言う。それに思い出すのは島自治区でのナズーとの遭遇。彼らが逃げた先の遺跡までは追いかけてこなかったから。
「もしかして、プトレア教と関係があるんですかね? その教えの聖地である遺跡にナズーは近付けない的な」
「なるほどな。もしかして、魔王はプトレア教を毛嫌いしているってことか?」
ちらり、とオルチェがカムラの方を見た。魔王とはカムラと同等の存在であると聞いている。だからだろう。彼女は何かしらの信仰心は持ち合わせていないか、もしくは嫌っていたりするのかもしれない。
「どうなんだ、『名なし』さんは」
「その言い方、嫌いだから『カムラ様』と言え」
「はあ? 何言ってんだ?」
「あれ、言葉が通じない? あたしのことを『カムラ様』と呼べって言ってんの」
そう言うカムラに「冗談じゃねぇ」と顔を歪めた。
「フレイヴのことを様付けで呼んでねぇってのに、なんでお前だけそう呼ばなきゃならねぇんだ」
「呼べ、三下」
「誰が言うか。それだったら、カムラ女とでも呼ばせてもらうぞ。お前、女の姿をしているくせに、口調は男になるときがあるからな。女ってこと忘れそうだ」
「あっそ」
結局、カムラが何かしらの宗教を信仰しているのかについては言わなかった。いや、それは別にいい。構わない、言わなくても。それに、こうして二人の喧騒も落ち着きを見せてきたし、今日のところは――。
どこか、見つかりにくい場所に拠点を構えませんか、とフレイヴが三人に対して口にしようとしたときだった。
じっ。
何かが近付いてくるような気配がした。思わず、焦って後ろを振り返るも、そこには誰もいない。
気になって仕方がなかったが、他の三人――特に戦闘関係で頼りになるオルチェは何も感じていないようである。
――気のせい、なのか……?




