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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第十一章 新王国軍とナズー◆
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132ページ

「理性を持ったナズーが逃げ出した、だって」


 封書の中身を呼んだカムラはちらり、とフレイヴの様子を見た。じっと文書に釘付けだった。何かを見入るようにして、真剣な眼差しをしている。ややあって、口をしたのは「冗談じゃない」の悲しみを帯びた一言だった。


「だから……だから、いつも到着が遅れるの? 軍は町中を警備しているはずじゃないの?」


 もしも、こんな共存委員会というふざけた委員会がなければ、歴史はどうなっていただろうか。ナズーの脅威を知っているはずの軍は助けを求める民衆を見捨てるつもりだったのか。それならば、そんなことをしなければ――理性のあるナズーが存在しなければ、家族や大切な人はナズーにならずに済んだだろうか。故郷を失うことはなかっただろうか。そんな万感が胸に詰まり、詰まっていく。あまりにも詰まり過ぎて心が苦しかった。悲しかった。つらかった。寂しいと思う。心を痛めているフレイヴにオルチェが、悪気のない辛辣な言葉を浴びせてくる。


「ナズーに飲み込まれた町や村が立ち入り禁止になるのも、これが原因だろうな」


「戦友軍でも入れないのか?」


「そもそも、戦友軍は町はずれに出たナズーの討伐がほとんどだからな。しかも、依頼を受けて、出動する要請書類を軍に提出しなきゃならんから勝手に動けん。一応、軍との規約があったりするし……そういうことだったのか」


 フレイヴの故郷や地図から消えた町などが立ち入り禁止だということを知らないわけではない。ただ単に危険だからという思い込みがあったからに過ぎないのだ。一般市民は軍や戦友軍に助けを乞う。それだけ。


 英傑の町でグスカが言っていたことを思い出す。


【来週あたりに俺らが行って、退治する予定だった】


 遅過ぎる出動予定。オルチェの言うことも納得いく。これは戦友軍が悪いわけではない。彼らは助けに行きたくても、行けない状態だったのだ。理性のあるナズーを殺しかねないかもしれないから。新王国にいる独立の国の民である戦友軍にも覚られないように。


 すべて新王国軍の『わざと』だったのだ。


 むかつきが晴れない事実に拳を握りしめるしかできなかった。これは一刻も早く魔王を倒さなくてはならない。そうだとしても、こちらに勝算はなかった。それでも、今の自分たちがするべきことは決まっている。理性を保った状態のナズーの個体を見つけ、彼が知っている情報をすべて吐き出させることだ。もしかしたならば、魔王を倒す手立てがあるかもしれないから。

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