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どこに逃げたらばいいのかわからなかった。とにかく人通りの少ない道をフレイヴは走っていく。それにアルフレッドは何も言わない。これで構わないのだろう、と納得するのではない。本当にこれで構わないのだろうか、と不安にならなければならない。
後ろを見た。青年軍人らしき人物どころか、軍人たちの追っ手はないようだ。やはり、彼はアルフレッドが言っていた新王国軍人ではない存在――ケレントの手下なのかもしれない。こちらはほぼ丸腰だというのに、捕まえようとしてこない。ダミーカムラ本を斬ったときからだ。二人は今一度軍人たちの追っ手がないかどうかの目視をすると、走ることを止めて立ち止まった。全力疾走で走ったものだから息が切れる、切れる。
「なんとか、撒けたんですかね?」
「どうだかな。逃げきれた、じゃなくて……わざと逃がしたとも取れるような」
わざと逃がした、という話を聞いて汗だくの顔でしかめっ面を見せる。アルフレッドの憶測から考えられるのは――あの青年軍人(?)は軍の命令でも何でもない。個人的理由でカムラの本を狙っていた。そう考える他ないようだ。
「とにかく、あの二人と早々に合流して町から出た方がいいのかもしれん」
自分たちの正体を見抜いていた誰かだ。カムラの本が手に入らなかったという腹いせに、本当に軍へと通報しかねないだろう。そうとなれば、こちらが困る。逃げる場所なんてナズーが出没するようなところしかないのだから。
「二人とも、まだ軍施設ですかね?」
「かもしれんな。相容れない二人だからな。どうせ受付で口げんかをして受付嬢を困らせてそうだ」
束の間の一息にアルフレッドは冗談を言った。そのジョークがフレイヴの想像を掻き立ててくるのか、思わず吹き出してしまう。どちらの意見も聞きたくない、とギャーギャー騒ぐ様子が思い浮かんで仕方がない。
「ちょっと、変なことを言わないでくださいよ」
あまりにも面白い想像だったのか、フレイヴは久しぶりに頬を緩めた気がした。笑いが止まらない。ちょっと、苦しいや。
「変も何も。お嬢たちは大体それで成り立っているだろ」
「いや、まあ。そうですけど」
見慣れた風景を想像するだけで笑ってしまうとは。余程笑いに飢えていたのか。それとも、単純に笑いの沸点が低いだけなのかはフレイヴのみが知るだけ。
やっと顔の筋肉を自在に操ることができるまで五分以上も要した。もちろん、それはフレイヴだけではない。アルフレッドもだ。彼らは「久しぶりに笑った」とどこか嬉しそうに、軍事施設の方へと向かうのだった。




