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話ではなかった。女性軍人こと、ウルノと名乗った彼女はカムラとオルチェに対して取引をしないか、と言ってきたのだ。話が違う、と二人は珍しくも顔を見合わせる。嫌な予感しかしない。どうする? どうするよ、と自分たちの反応になる言葉を視線で譲り合う二人。そんな彼らの言葉を待たずにウルノは「内容はね」とすでに二人が取引をすると見込んだようにやり取りをしようとしていた。
「あなたたちが持っている情報と私が持っている情報の交換だよ」
「いやいや、待てよ。俺たちはあんたと取引するとは何も言っていないぜ」
「言ってるじゃん、現在進行形で」
ウルノの一言で黙るオルチェに、鼻で笑うカムラ。その小さな失態を大いに喜んでいるようだ。なんという性格の悪い趣味をお持ちのことやら。いや、毒舌的な人物である限りはそういうことが当然だと思わなければならないか。そして、そんな彼女であるならば――。
「言葉選びが悪い」
余計な一言がついてくるのがセットだ。オルチェ、ここは我慢しろ。こんなあやしい人物の前でギャースカ言っていると、自分たちの本性がバレてしまうのだから。大声で怒鳴りたい気持ちを抑えつけつつも、大きく深呼吸をして「あのな」とウルノに顔を向けた。
「取引はまず話を聞くだけだ。だが、一つだけ聞かせろ。俺たちが持っている情報を得たいあんたは何が狙いなんだ?」
「親の仇」
ウルノの一言でより一層緊迫感が増す。彼女はこちらの言葉を待たずして「私ね」と話をつなげる。
「親がナズーになっちゃったの」
「仇なら、そこら辺にゴロゴロしているナズーをぶっ殺せばいいだけの話じゃねぇか」
そう言うオルチェにカムラも同意する。それだけで事足りる話だというのに、ウルノは何を知りたいというのだろうか。
「ナズーを殺しても、それは親を殺すのも当然でしょ? 私はそんな気持ちでナズーを倒したくないの」
「じゃあ、なんでだよ」
「軍で噂になってた。ナズーを生み出した存在がいるって」
親の仇を討つためにはナズーではなく、ナズーという存在を作り上げた存在を倒したい、とウルノは言う。それだからこそ、彼女が取引したい内容は――。
「ナズーの親玉のこと、知っているでしょ? 教えてよ」
「…………」
カムラは言おうか迷った。ずっと流れでオルチェに任せてきたのだが、彼は教えてあげるだろうか。否、そういうことには無頓着だろう。だったら、こちらの意思で情報提示してあげるのも問題はない。そもそも、クラッシャーだの神様の日記だの極秘の話ではないのだから。味方を増やしたかったから、以前は友人に言い触れ回っていた記憶はある。しかしだ、クラッシャーの囮役であるオルチェからすると、相手にすべての物事を話さないだろう。それは敵である彼女の存在すらも。すべてを知っているはずからこそ、真実を教える気にはなれない。そういう男だ。彼は。おそらく。そうだとしても、自分はクラッシャーの敵。オルチェの言うことに一々聞く耳を持つような存在ではない。だからこそ――。
「教えてあげる」
カムラはオルチェの話を聞かずして、取引を始めようとするのだった。




