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「お兄さん、軍の人間じゃないはずなのにな?」
フレイヴとアルフレッドに声をかけてきた軍人らしき青年。矛盾点を突かれ、たじろぎを見せるかと思われた。だが、そのような挙動不審は見当たらない。むしろ、何を言っているんだとでも言いたげな顔をしていたのである。
「何が言いたいんだ」
「俺たちがその場にいたのにも関わらず、本のためだけに俺たちは自由の身なのか? と訊いているんだ」
アルフレッドは青年軍人の矛盾点を見つけ出しているようだった。それはフレイヴにはわからなかったが、ここは彼に任せておけばなんとかなるのかもしれない。そう信じることにするのだった。
「当たり前だ」
矛盾を見出しているアルフレッドにも青年軍人は察している様子だったが、回りくどい言葉に少しだけイライラとしていた。この殺人鬼は何が言いたのだろうか。
「それならば、俺たちの指名手配書は町中から消えるべきじゃないのか? 別に俺たちを逮捕するわけでもないのに」
そう言うアルフレッドは懐から二枚の紙を取り出した。そこにあるのは二人の指名手配書だった。彼らの名前に姿人相の特徴が書かれた物。言う通り、町中にはべたべたと二人の指名手配書が張られていたのである。だからこそ、こうして人気のない場所にいるようなもの。
「言ったはずだ、本を渡せば自由の身。渡せば、の話ではあるが……強引に奪うという手もあるだろうに。ということは、お兄さんの言う『自由の身』という約束は嘘になるんだよ」
アルフレッドはフレイヴの指名手配書を投げるように見せつけた。
「見てみろ、この子の指名手配書の内容を。ここに書かれているのは赤い本を所持している、とあるな? 上からの通達によって、本の回収をする。これはわかる話であるが、俺たちを『自由の身』にするというのはどうせお兄さんが独断で決めたことだろ?」
「だからなんだ」
「勝手にそういうことをお兄さんだけが決めてもいいのかって話だよ」
「上からの命令だからな。別に二人を逃そうが、その本を回収するのが目的だ」
しかしながら、軍人青年に焦る様子は一切ない。
「本当に軍は俺たちの捕縛を諦めると訊いているんだが?」
「諦める」
青年軍人は表情を変えず、淡々と受け答える。そうしている間にも、ゆっくりとした足取りでフレイヴに近付こうとしていた。明らかに彼が手にしている赤い本を奪う気だ。ええい、一か八かだ。自分たちが危険な目に合うのは間違いないだろう。それでも、もう予測はついている。彼は――この人物は――。
「バックヴォーンは何が狙いなんだ?」
「何の話だ」
――どこまでも素っ頓狂な顔をしやがって。




