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武装軍人である青年はダミーカムラ本を見ながら二人に声をかけてきた。まさかとは思うが、フレイヴにとってこの青年軍人は見たことがなかったし、それはアルフレッドも同様だった。いや、どこかで会ったことがあるような気がする。結果、気がするだけか。所詮は他人の空似だってこともある。ここで逃げたとしても、厄介事になるのは間違いなし。なぜにこちらに声をかけてきたのだろうか。そう不思議に思っているふり(ただし、フレイヴの場合は下手くそなふり)をしていると――。
「その本、こちらに引き渡してくれないか」
そう、ダミーカムラ本を指差してきた。どうやら、カムラの本を狙っているのはケレントだけではないようだ。新王国の軍も手に入れたいと思っているのか。いや、それもそのはず。元悲劇の町でカムラの剣を見せてしまっているから。彼らがあの剣の威力をどこまで知っているのかは知らない。しかし、彼らにとって有益な存在であることには変わりないはず。だから、こうして話しかけてきたのだろう。
「そうすれば、二人は自由の身だ。それは保証する」
自分たちが追われの身だということを利用して。
フレイヴは嘘も下手であり、演技力も全くない。それだからこそ、アルフレッドという元々は普通の大人もいる。彼は「どういう意味だ?」と自分を守るようにして出てきた。いざというときは逃走する気満々で。
「これはこの子の所有物だ。軍人さんは人の物を巻き上げようと思っているのかね?」
「それが誰の思い出の品であろうにも、残念ながら上からの通達だ。フレイヴ・アイザニラが持つその本の回収指示がかかっているし、戦友軍にもその依頼が入っているはずだ」
「なんだ、なんだ? これが呪いの書とでも言うのかね?」
「俺がその本がどういう物であるかは知らない。だが、下っ端が受け負う指示は指示だ。上からの指示は命令と同様。逆らえない」
それだから、本を明け渡せ。青年軍人がそう言う。当然フレイヴは渡したくない、というわけではない。こちらはダミー。本物は今頃軍事施設にいる。だがしかし、このダミーカムラ本を渡したところで解決するだろうか。もし、偽物だとバレてしまえば?
カムラは一度だけ顔を見られている。軍事施設から逃げたことも知られている。自分だけの話ではないことは十分にわかりきっていた。今はケレントに関する調査をしている場合ではないこともわかっている。自分たちがするべきなのは、本を渡せと言ってくる青年軍人から逃れること。渡すか渡さないかの選択肢。どちらを選べばいいのだろうか。どちらが最良の選択肢なのか。焦りと不安で上手く頭が回らない。フレイヴが困惑していると「待て」そうアルフレッドが時を止めたように言ってきた。
「上からの命令ならば、仕方ない。が、一つだけ聞かせてくれないか? 俺たちがこれを渡せば自由の身だと言っていたな? 本当にそのままの意味で捉えてもいいのか? というか、俺たちがどういう存在であるかをお兄さんは知っているとでも?」
「ああ、殺人鬼のアルフレッド・バイゾーンと軍務執行妨害の罪に囚われているフレイヴ・アイザニラの両名だろう?」
「おお、俺たちのことを知っているのか。お兄さん、軍の人間じゃないはずなのにな?」
アルフレッドは青年軍人を疑っていた。本物の新王国軍人としての存在を。そして、この人物の本当の目的を。




