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話をしたい、というカムラに声をかけてきた女性軍人はにこにこと笑顔を絶やそうとしない。それがなんだか不気味に思えて彼女は眉根を寄せていた。どう反応していいのかわからない、どう返事をしたらいいのか知らない。これは答えてあげるべきなのだろうか。そう思っていたときだった。受付から戻ってくるように、オルチェが片手に一枚の資料書類を持ってくる。彼の表情を見る限りだと、あまり有力な情報を得ることができなかったようである。
「おー、ナズーのことだけどよ……」
声音ももちろん、どこか残念そう。なかなか思い通りにいかないからなのか、タバコを咥え始めるが――カムラと一緒にいる女性軍人にそのタバコを床に落としそうになる。
「えっと?」
オルチェに至ってもどう反応すればいいのやら。カムラは困惑した様子であることは間違いない。だって、こちらを見てどうしたらいい? と言っているような目をしているから。
「こんにちは」
女性はオルチェに対しても柔らかい口調であいさつをする。第一印象は愛想のいい人だろう。中身はわからないが。
「そいつに、何かご用で?」
「ええ、まあお話をしたくてね。もちろん、あなたも一緒でも構わないわ。オルチェ・オルバックスさん」
「……へえ、どこでお話をします?」
できることならば、このように人が多い場所は避けた方がいい。そんな直感が頭に過る。この女性が自分たちに話しかけてくるなんて。しかも、相手はこの国の軍人と来た。それならば、話は一つしか見えてこない。
【気をつけてね。一応はカムラも顔は見られているから】
フレイヴはそう言っていた。だが、その言葉にカムラは全部知らないで通すと答えていた。彼女に動揺はあまり見られない。焦りはあるが、この場合はどうすればいいのかわからない、だろう。女性軍人の話を信用するべきなのか、と。それに、勝手な行動を取れば、誰にとっても火の粉が降りかかる可能性だってある。それを重んじての顔を見せているのだ。何、話を聞くだけだ。多少の話をするだけだ。不本意ではあるが、カムラはこちらの話を合わせてくれるだろうし、こちらも向こうの話に合わせるだけだ。何もおかしなことではない。嘘はバレなければいい。知られなければいい。要は矛盾点を覚られなければいいだけの話。だからこそ、ここで変に嫌がってもあやしまれるだけだ。この場は大人しくこの女性の言い分を聞いてあげようではないか。
話は長くない、という女性軍人は二人を施設の奥へと案内するのだった。




