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カムラとオルチェは離れて町中を闊歩していた。当然だ。二人は基本的に敵同士。そんな自分たちが一緒にいるなんて天と地がひっくり返るぐらいだし、なんだったら彼女にとってケレントに悪用される方がまだマシだと思っているのだ。
数歩先を歩くオルチェの背中を見た。基本的にカムラが追っていたクラッシャーとは一目見ただけでも一発でわかる存在である。なぜならば、人ではない存在だから。この世界に生きる存在ではないから。それは彼女も似たような者。
「…………」
自身の手の平を見る。初めてフレイヴと会ったとき、自分が少女の姿をしていると聞いた。事実そうだった。数ヵ月ほど前まで十数年間も男の姿でクラッシャーを追っていたから。 そう、オルチェを見たときにどうしてクラッシャーだと判別したのか。それは、彼の姿見が――。
「おい」
ぼんやりと考え事をしていて歩いていると、オルチェに呼びかけられた。すぐに我に戻るようにして、声がした方を見れば、彼は怪訝そうな表情を浮かべているではないか。というよりも、いつの間にかカムラの方が先に歩いているようだ。
「いくら俺の言う通りに動かないからって言っても、施設すらも無視する気か?」
なんて言われて初めて気付く。オルチェが立っている場所は『軍本部』と書かれた建物の前にいるのだから。考え事に集中し過ぎた。これにカムラは「ごめん」と少しだけ小さくなる。
「早く言ってくれたらいいのに」
「何度も声をかけたが? お前が人の話を聞こうとしないからだろ」
「聞く気ないし」
「聞け。そして、そろそろ自分の立場を弁えろ」
「はいはい」
そうは返事するものの、そのようなことを鑑みようとはしない。だって、いくらフレイヴの手下に成り下がったとしても、まだまだこちらの疑問は晴れていないのだから。カムラはさっさと軍事施設の中へと入って行こうとするオルチェを訝しげに見つめるのだった。
――なんで?
受付で女性に話しかけているオルチェの横顔を見て思う。立ち振る舞い、仕草、声、どれをとってもだ。
「少々お待ちください」
オルチェの声を耳に入れたくなかった。それだからこそ、それ以外の音や声を強引に聞こうとする。彼の声以外の音を強く引き出そうとする。聞きたくなかったから。そうして周りの音を聞いていると、カムラの肩を誰かが叩いた。耳ばかりに集中していたものだから、あまりのびっくりに肩を強張らせてしまう。そして、勢いよく振り返った。彼女の後ろにいたのは――自分より少し年上の女性だった。
「こんにちは」
その女性は物腰が柔らかそうな表情を見せているが、それとは対極的に武装をしている――言わば、新王国の軍人である。
「ちょっと、お話いいかな?」




