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第4話  初めてのゴブリン

コロコロと転がったダイスが。


 やがて。


 止まった。


【出目:2】


「……2か」


 昨日は1。


 今日は2。


 まあ、そんな簡単に高い数字が出るわけじゃないらしい。


 俺は苦笑しながら、自分のステータスを確認する。


【名前】カイ

【職業】ギャンブラー

【レベル】1

【HP】33

【MP】13

【攻撃力】13

【防御力】13

【魔力】13

【素早さ】13

【運】23


「全部、2上がったな」


 昨日の出目は1。


 今日は2。


 今のところ、少しずつではあるけれど強くなっている。


 それに。


 昨日、薬草が大量に見つかったのも気になる。


 もしかすると、運が上がった影響なのかもしれない。


 ただ。


 まだ二日しか経っていない。


 偶然という可能性もある。


「まあ、これから分かるか」


 俺はステータス画面を閉じた。


 今日はもう、ダイスを振った。


 これ以上は何もできない。


 なら。


 明日も地道に稼ぐしかない。


     ◇


 翌日。


 俺は再び冒険者ギルドへ向かった。


 武器が欲しい。


 防具も欲しい。


 けれど、今の俺には金がない。


 だから。


「今日も薬草採取をお願いします」


「はい。分かりました」


 受付嬢から依頼を受ける。


 昨日と同じ薬草採取だ。


「薬草の場所は、昨日と同じ辺りで大丈夫ですよ」


「分かりました」


 俺はギルドを出た。


     ◇


 街の外へ出る。


 昨日と同じように、街道から少し離れた場所を歩いていく。


 薬草を探す。


 葉の形。


 赤い葉脈。


 昨日教えてもらった特徴を思い出しながら、一つずつ探していく。


「あった」


 しゃがんで薬草を摘む。


 さらに少し歩く。


「……ここにもあるな」


 また一つ。


 さらに一つ。


 昨日と同じように、薬草が見つかる。


「やっぱり多いな」


 これが運23の効果なのか。


 それとも、ただ単にこの辺りに薬草が多いだけなのか。


 まだ分からない。


 それでも。


 薬草を集めれば金になる。


 俺は黙々と採取を続けた。


     ◇


 しばらく歩いた、そのときだった。


 ガサッ。


「……ん?」


 茂みが揺れた。


 俺は立ち止まる。


 風かと思った。


 けれど。


 もう一度。


 ガサッ。


 今度は明らかに何かがいる。


「……」


 俺は警戒しながら、茂みを見る。


 すると。


 そこから緑色の小さな人影が出てきた。


「……ゴブリン?」


 初めて見る魔物だった。


 小柄な身体。


 緑色の肌。


 手には粗末な棍棒を持っている。


 ゴブリンも俺に気づいた。


「ギャッ!」


「……」


 どうする。


 俺は反射的に考えた。


 【戦闘ダイス】。


 今日はまだ使っていない。


 だから。


 使うことはできる。


 昨日の狼との戦いでは、出目が5だった。


 あのときは、五倍の戦闘能力で狼を倒すことができた。


 なら。


 今回も使えば、ゴブリンを倒せるかもしれない。


 けれど。


 俺は武器を持っていない。


 防具もない。


 そして。


 【戦闘ダイス】の出目は1から6。


 もし1や2が出たら。


 まともに戦えるか分からない。


「……」


 ゴブリンが棍棒を構える。


 俺も少しだけ後ろへ下がった。


 勝てるかもしれない。


 でも。


 勝てる可能性があるからといって、毎回戦う必要はない。


 俺はまだ、この世界に来たばかりだ。


 武器もない。


 防具もない。


 レベルも1。


 だったら。


「……逃げよう」


 俺は踵を返した。


「ギャッ!」


 背後からゴブリンの声が聞こえる。


 走る。


 とにかく走る。


 しばらくして振り返る。


 ゴブリンの姿は見えない。


「……撒いたか」


 俺は息を整える。


 戦闘を避けた。


 それでいい。


 今の俺には、まだ準備が足りない。


「戦うなら……もっと準備してからだな」


 武器を買う。


 防具も買う。


 そして。


 もっと強くなってから魔物と戦う。


 俺はそう決めた。


     ◇


 その後。


 俺は薬草採取を続けた。


 何度か周囲を確認しながら、慎重に歩く。


 幸い、それ以上魔物に遭遇することはなかった。


 集めた薬草を持って、俺は街へ戻った。


     ◇


「今日もたくさん採れましたね」


 受付嬢が薬草を確認する。


「昨日と同じくらいです」


「ありがとうございます」


 報酬を受け取る。


 少しずつだ。


 本当に少しずつだけど。


 金は貯まっている。


「もう少し貯めれば、武器くらいは買えそうだな」


 俺は手持ちの金を確認する。


 まだ足りない。


 でも。


 昨日よりは確実に増えている。


「焦る必要はない」


 俺はギルドを出た。


 明日も薬草を採ればいい。


 そう思いながら、宿へ戻った。


     ◇


 翌朝。


 目を覚ます。


「……今日もダイスを振るか」


 昨日の出目は2。


 一昨日は1。


 今日は。


 もう少し高い数字が出てほしい。


 俺は立ち上がった。


「【ステータスダイス】」


 目の前に。


 二十面のダイスが現れる。


 空中でゆっくりと回転する。


 そして。


 落ちた。


 コロコロ。


 コロコロ。


 やがて。


 止まる。


【出目:15】


「……15?」


 一瞬。


 意味が分からなかった。


 昨日は2だった。


 それなのに。


 今日は15。


「……一気に来たな」


 俺は思わず笑った。


 ステータスを確認する。


【名前】カイ

【職業】ギャンブラー

【レベル】1

【HP】48

【MP】28

【攻撃力】28

【防御力】28

【魔力】28

【素早さ】28

【運】38


「全部、15上がった」


 昨日までとは、明らかに違う。


 攻撃力も。


 防御力も。


 素早さも。


 全部が一気に上がっている。


「……悪くない」


 むしろ。


 かなり嬉しい。


 一日一回。


 出目はランダム。


 1のときもあれば、2のときもある。


 そして。


 15が出ることもある。


 なら。


 毎日続ければいい。


「……これなら、いつか本当に強くなれるかもしれないな」


 そして。


 もう一つ気づいた。


「運も38か」


 昨日までは23だった。


 今日、一気に15上がったことで、運も38になった。


 もしかすると。


 この運が上がれば、ダイスそのものにも何か変化があるのかもしれない。


 まだ分からない。


 でも。


 試してみる価値はある。


「まずは武器だな」


 俺は冒険者ギルドへ向かう準備を始めた。


 薬草を採る。


 金を貯める。


 武器を買う。


 防具も揃える。


 そして。


 少しずつ強くなっていく。


 俺はまだ、冒険者になったばかりだ。


 焦る必要はない。


 一歩ずつ。


 確実に進めばいい。

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