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第3話 薬草採取

翌日。


 俺は冒険者ギルドへ向かった。


 昨日。


 初めて魔物と戦った。


 【戦闘ダイス】で五の目が出たことで、なんとか狼を倒すことはできた。


 けれど。


 あの力は一日一回しか使えない。


 武器も防具もない。


 それに。


 俺はまだレベル1だ。


「……今の俺が、いきなり魔物討伐を続けるのは危険だな」


 まずは金を稼ぐ。


 そして。


 武器や防具を買う。


 それから、少しずつ強くなっていけばいい。


「掲示板を見てみるか」


 掲示板には、いくつもの依頼が貼られていた。


 薬草採取。


 荷物運び。


 簡単な雑用。


 その中から。


「薬草採取……これにするか」


 戦わなくていい。


 今の俺でもできそうだ。


 依頼書を持って、受付へ向かう。


「薬草採取の依頼を受けたいんですが」


「はい。初めてですか?」


「はい」


「では、薬草の見本をお見せしますね」


 受付嬢が奥から小さな籠を持ってきた。


 その中には、何種類かの草が入っている。


「こちらが薬草です」


 受付嬢が一枚の葉を取り出した。


「葉の形と、この赤い筋が特徴です。似た草もありますので、間違えないようにしてください」


「分かりました」


 俺は薬草をじっくり見る。


 葉の形。


 茎。


 赤い筋。


「覚えました」


「では、採取した薬草をこちらへ持ってきてください。状態を確認して、買い取ります」


「ありがとうございます」


 俺は薬草の見本を頭に入れ、ギルドを出た。


     ◇


 町の外。


 昨日、狼に襲われた場所とは反対方向へ向かう。


「今日は魔物に会いませんように……」


 昨日のことを思い出す。


 戦闘ダイスで五が出たから勝てた。


 もし、あれが一や二だったら。


「……考えたくないな」


 俺は苦笑する。


 できれば、今日は戦いたくない。


 そんなことを考えながら歩いていると。


「……ん?」


 足元に見覚えのある葉があった。


「あれって……」


 しゃがみ込む。


 葉の形。


 赤い筋。


「薬草だ」


 一つ摘む。


「よし」


 さらに歩く。


「あった」


 また一つ。


「……また?」


 少し先にもある。


 さらに、その先にも。


「あそこにもあるな」


 俺は次々と薬草を採取していった。


     ◇


 しばらくして。


「……なんか多くないか?」


 持ってきた袋を見る。


 すでに半分以上が薬草で埋まっている。


 最初は偶然だと思っていた。


 けれど。


「またあった」


 少し歩けば見つかる。


「こっちにも」


 また見つかる。


「……」


 俺は立ち止まった。


 昨日、ステータスダイスで上がった【運】。


【運】21。


「まさか……」


 俺は薬草を見る。


「運が関係してるのか?」


 確証はない。


 でも。


 これだけ薬草が見つかるのは、さすがに気になる。


「……まあ、考えても仕方ないか」


 今は採取に集中しよう。


 俺は再び薬草を探し始めた。


     ◇


 気づけば。


 持ってきた袋は、薬草でいっぱいになっていた。


「もう入らないな」


 俺は周囲を見る。


 まだ探せば見つかりそうだった。


 けれど。


「これ以上は持てない」


 今日はここまでにする。


 俺は町へ戻った。


     ◇


 冒険者ギルド。


 受付へ薬草を持っていく。


「薬草採取ですね」


「はい」


 受付嬢が袋を受け取る。


「……え?」


 中身を見た受付嬢が、目を丸くした。


「これ、全部薬草ですか?」


「そうです」


「ずいぶん採りましたね……」


「そんなに多いですか?」


「はい」


 受付嬢は薬草を一つずつ確認していく。


「状態もいいですね」


 そして。


「全部でこれだけになります」


 報酬額を提示された。


「……こんなにもらえるんですか?」


「はい」


「普通は?」


「初めての方なら、これの三分の一くらいですね」


「……三分の一?」


「はい」


 俺は目を丸くした。


「つまり、俺は普通の冒険者よりかなり多く採れたってことですか?」


「そうなりますね」


「……」


 俺は薬草を見る。


 そして。


 自分のステータスを思い出す。


【運】21。


「やっぱり……」


 偶然じゃないのかもしれない。


     ◇


 報酬を受け取った。


「ちゃんと金を稼げた」


 少しだけ嬉しかった。


 昨日は狼との戦いで、戦闘ダイスの力を知った。


 そして今日は。


 薬草採取で、もしかしたら【運】にも何か意味があるのかもしれないと分かった。


「ギャンブラーって……」


 俺は小さく笑った。


「意外と悪くないのかもしれないな」


 もちろん。


 まだ戦闘に関しては不安がある。


 昨日の狼も、戦闘ダイスがなければ倒せなかった。


 でも。


 俺には【ダイス】がある。


 毎日、一度だけ。


 それを積み重ねていけばいい。


「明日も、薬草採取してみるか」


 そう思ったところで。


 俺はふと立ち止まった。


「……そういえば」


 今日はまだ。


 ダイスを振っていない。


 昨日は昨日で、すでに【ステータスダイス】を振った。


 なら。


 今日も一回、振ることができる。


「一日一回だからな」


 俺は手を上げる。


「【ステータスダイス】」


 目の前に。


 二十面のダイスが現れた。


 空中で、ゆっくりと回転する。


「今日こそ、もう少しいい目が出てくれよ」


 ダイスが落ちる。


 コロコロと転がり。


 そして。


 止まった。


【出目:――】


「……え?」


 昨日とは違う数字だった。

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