↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
2/5

第2話 冒険者登録

翌朝。


 町の入口まで、アリサを見送りに来ていた。


 昨夜。


 俺たちは結婚の約束をした。


 そして今日。


 アリサは旅に出る。


「アリサさん!」


 声が聞こえた。


 教会の神官と数人の護衛、それに馬車がこちらへ向かってくる。


「お待たせしました」


「いえ」


 アリサが答える。


「それでは、勇者たちの待つ町へ向かいましょう」


「分かりました」


 アリサは俺を見る。


「じゃあ……」


「ああ」


「行ってくるね」


「気をつけてな」


「うん」


 アリサが笑った。


「絶対に帰ってくるから」


「待ってる」


 アリサは小さく頷いた。


 そして。


 教会の関係者たちと一緒に、町を出ていった。


 俺はその背中を見送った。


 やがて。


 アリサの姿が見えなくなる。


「……行っちゃったな」


 寂しい。


 けれど。


 いつまでも立ち尽くしているわけにはいかない。


「俺も、俺で頑張らないとな」


 俺は家へ戻った。


     ◇


 部屋に戻ると、昨日の成人の儀で授かった職業を改めて確認する。


「【ステータス】」


 そう念じると。


 目の前に半透明の画面が現れた。


「……これがステータス画面か」


 昨日は見る余裕がなかった。


 改めて確認してみる。


【名前】カイ

【職業】ギャンブラー

【レベル】1


【HP】30

【MP】10

【攻撃力】10

【防御力】10

【魔力】10

【素早さ】10

【運】20


「……運だけ高いな」


 他の能力は十。


 なのに、運だけ二十。


 さすがギャンブラーと言うべきなのか。


 俺は少し笑った。


 そして。


 職業についての説明を確認する。


【ギャンブラー】

レベルアップ時の能力値上昇量は、一般的な職業の約半分。


「……半分?」


 俺は画面を見つめた。


 普通の職業なら、レベルが上がれば順当に能力が伸びていく。


 けれど。


 ギャンブラーは、その成長量が半分。


「だから、ハズレ職業って言われたのか」


 昨日の成人の儀を思い出す。


 周囲から向けられた視線。


 笑い声。


 戦闘には向かないと言った神官の言葉。


「……確かに、普通に考えたら弱いな」


 俺は苦笑した。


 そのとき。


 スキル欄が目に入った。


【スキル】


【ステータスダイス】

【戦闘ダイス】

【回復ダイス】

【イカサマ】

【スキルトランプ】


「……こっちはどうなんだ?」


 俺はまず、【ステータスダイス】を選んだ。


 説明が表示される。


【ステータスダイス】

一日一回使用可能。

二十面ダイスを振り、出た目の数値を全能力値に加算する。


「全能力値に……?」


 俺は画面を見つめた。


 一が出れば、すべての能力が一上がる。


 二十が出れば、すべての能力が二十上がる。


「これは……悪くないな」


 レベルアップでの成長が遅い代わりに。


 毎日、ダイスを振って成長できる。


「問題は、出目か」


 さらに確認する。


【出目】

1~20


「一から二十……」


 最大で二十。


 最低でも一。


「一日一回か」


 何度も振れるわけではない。


 なら。


「今、振っておくか」


 俺はスキルを発動した。


「【ステータスダイス】」


 目の前に、二十面のダイスが現れた。


 空中で回転する。


 カラカラと音を立てながら、床へ落ちた。


「……」


 出た目は。


「一」


 思わず苦笑した。


「いきなり最低かよ」


 画面に結果が表示される。


【出目:1】


 すると。


 ステータスが変化した。


【HP】31

【MP】11

【攻撃力】11

【防御力】11

【魔力】11

【素早さ】11

【運】21


「おお……」


 全部、一ずつ上がった。


 たった一。


 それでも。


 確実に強くなっている。


「毎日これを続ければ……」


 レベルアップでの成長が遅くても。


 毎日少しずつ強くなれる。


「これは、ちゃんと使っていかないとな」


 俺は次に【戦闘ダイス】を確認した。


【戦闘ダイス】

一日一回使用可能。

六面ダイスを振り、出た目に応じて全能力値を強化する。


【出目】

1……×1

2……×2

3……×3

4……×4

5……×5

6……×6


「全能力値を倍率強化……」


 五が出れば五倍。


 六なら六倍。


「かなり強いな」


 ただし。


「一日一回か」


 使えるのは一度だけ。


 しかも、出目は選べない。


「なるほど」


 まさに。


「ギャンブラーってわけか」


 次に【回復ダイス】を見る。


【回復ダイス】

一日一回使用可能。

六面ダイスを振り、出た目に応じて回復効果を発生させる。


「回復か」


 戦うなら、これも重要になりそうだ。


 最後に【イカサマ】。


【イカサマ】

魔物を倒した際、一定確率で対象が所持する物をランダムで取得する。


【成功確率】10%


「これも運次第か」


 狙った物を取れるわけではない。


 何が手に入るかも分からない。


「まあ、使ってみないと分からないな」


 最後に【スキルトランプ】を見る。


【スキルトランプ】

現在、使用条件を満たしていません。


「これはまだ使えないか」


 俺はステータス画面を閉じた。


 とりあえず。


 自分の職業については分かった。


 成長は遅い。


 でも。


 毎日使えるダイスがある。


「これなら……」


 もしかしたら。


 普通の職業とは違う強くなり方ができるかもしれない。


 そう思った。


 そして。


 俺は財布を見る。


「問題は……」


 これからどうやって生活するかだ。


 アリサが旅に出た。


 俺も生活費を稼がなければならない。


 食費。


 光熱費。


 その他にも金は必要だ。


「……冒険者になるか」


 魔物を倒せば報酬がもらえる。


 素材を売ることもできる。


 それなら。


 ギャンブラーの能力を試しながら、生活費も稼げる。


「よし」


 俺は家を出た。


     ◇


 冒険者ギルドで登録を済ませる。


「これが冒険者証です」


 受付からカードを受け取った。


「ありがとうございます」


 掲示板には、いくつもの依頼が貼られている。


 薬草採取。


 荷物運び。


 魔物討伐。


「魔物討伐……」


 俺は依頼書を見る。


 報酬も悪くない。


「これなら生活費も稼げそうだ」


 俺は依頼を受けた。


 そして。


 町の外へ向かった。


     ◇


 しばらく歩いていると。


 草むらが揺れた。


「……ん?」


 次の瞬間。


 一匹の狼が飛び出してきた。


「魔物……!」


 俺は思わず身構えた。


 武器はない。


 防具もない。


 それでも。


「やるしかない!」


 俺は拳を握った。


 狼へ向かって走る。


「うおおっ!」


 拳を振り抜いた。


 ドンッ!


「痛っ!」


 拳が痛い。


 狼はほとんど動じていない。


「……え?」


 狼が唸る。


「グルル……」


「いや、待て」


 俺は後ずさる。


 狼が姿勢を低くした。


「来る……!」


 次の瞬間。


 狼が飛びかかってきた。


「うわっ!」


 慌てて横へ飛ぶ。


 爪が地面を削った。


「危なっ!」


 俺は距離を取る。


 心臓が激しく鳴っている。


「……俺、弱いな」


 当たり前だ。


 冒険者になったばかり。


 武器も防具もない。


 そんな状態で、魔物に勝てるわけがない。


 狼が再びこちらを見る。


 そして。


 また飛びかかってきた。


「くそっ!」


 俺は避けようとする。


 けれど。


 狼の動きが速い。


「しまっ――」


 牙が迫る。


「これ……死ぬ!」


 その瞬間。


 昨日確認したスキルが頭をよぎった。


【戦闘ダイス】


「……そうだ」


 俺には、これがある。


 俺は叫んだ。


「【戦闘ダイス】!」


 目の前に、六面のダイスが現れた。


 空中で激しく回転する。


「頼む……!」


 ダイスが落ちる。


 コロコロと転がり。


 そして。


 止まった。


【出目:5】


「……五!」


 次の瞬間。


 身体の奥から、力が一気に溢れ出した。


「なんだ……これ……!」


 腕に力が漲る。


 脚が軽い。


 身体全体が、別人になったようだった。


【戦闘能力:×5】


「五倍……!」


 迫ってくる狼を見る。


 さっきまで怖かった。


 でも。


 今は。


「……いける!」


 俺は拳を握った。


 狼へ向かって、全力で拳を振り抜く。


「うおおおおっ!」


 ドゴンッ!!


 拳が狼の身体に叩き込まれた。


「ギャンッ!」


 狼の身体が吹き飛ぶ。


 地面を転がり。


 しばらくして。


 動かなくなった。


「……」


 俺は拳を見つめた。


「……倒した?」


 恐る恐る狼へ近づく。


 動かない。


 本当に倒している。


「俺が……?」


 さっきまで、逃げることしかできなかった。


 それなのに。


「五倍って……すごいな」


 俺は自分の身体を見る。


 ただ。


「……これ、一日一回なんだよな」


 スキルの説明を思い出す。


 今日の戦闘ダイスは、もう使った。


 つまり。


「明日まで、もう使えない」


 俺は苦笑した。


 強くなった。


 でも。


 ずっとこの力を使えるわけじゃない。


「毎日、一回だけか……」


 俺は倒した狼を見る。


 それでも。


 さっきまでとは、気持ちが違っていた。


「……俺でも、戦えるんだ」


 初めて。


 ギャンブラーという職業に。


 少しだけ希望を持てた。


 そして。


 俺は狼を引きずりながら、町へ戻ることにした。


 ギャンブラーとして。


 そして冒険者として。


 俺の生活が、ここから始まる。

もし作品を気に入っていただけましたら、


ブックマーク登録や評価をしていただけると、とても励みになります。


一つ一つの評価やブックマークが、次の作品を書く力になります。


「面白かった」「続きも読んでみたい」と思っていただけましたら、ぜひ応援していただけると嬉しいです。


これからも楽しんでいただける作品を書いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。