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悪竜の騎士とゴーレム姫【第16部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第16部

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第八章 愛憎の行方①

 間違いなく敵対している二派。

 本来ならば、会談など設けるような間柄ではない。

 すぐさま開戦となってもおかしくなかった。

 だからこそ、果たして何から話すべきなのか。

 流石に少しの間、誰もが黙り込んでいたのだが、


「……やれやれだね」


 不意にザーラが頭を掻いて口を開いた。


「黙り込んでいてもしょうがないね。まずは改めて自己紹介でもしようかい?」


「……そうですね」


 コウタが苦笑いを浮かべた。


「思い返せば、あなたとは、ほとんどまともな会話をしていなかったですし」


「そうさね。まあ、ここには初見の相手もいるようだしね」


 そう言って、ザーラはコウタの後ろに控える大柄な少年と、黒髪の少女を見やる。


「あたしはザーラだ。ザーラレット=レガシィだ」


 足を組み、ザーラは名乗った。


「あたしの左にいるのがエリス。右にいるのがマイアだ。二人は知っているか。後ろにいるフード男がフェイ。長い黒髪がツルギさ」


「ボクも改めて名乗ります」


 それに対し、コウタはザーラを見据えた。


「コウタ=ヒラサカです。右側にいる子はリノ。左側はリーゼ。二人のことはすでに知っているでしょう。ボクたちの後ろに立つ少年の名前はジェイクです。そして黒髪の子がアヤちゃ……アヤメです」


「オレっちとアヤメ嬢ちゃんは、そっちのフード男さんとは面識があるな」


 と、ジェイクが告げる。

 フード男と呼ばれたフェイは「ああ」と頷いた。


「《水妖星》殿と初めて出会った夜だな。雑兵ばかりとはいえ、盗賊どもを塵のように蹴散らしていたな」


「……あなたが魔獣使いですか?」


 コウタがフェイを見据えて尋ねる。

 それから一拍おいて、


「……よければフードを取って頂けますか?」


「……ああ」


 コウタの要望に、フェイは頷いてフードを外した。

 露わになる素顔。精悍さはあるが、ごく普通の青年の顔だ。

 けれど、その顔に対してコウタは、


「……なるほど」


 小さく呟いた。


「本当によく似ている。あの男に」


 続けてそう告げた途端、


「「「―――ッ!」」」


 エリス、マイア、ツルギが微かに息を呑んだ。

 途方もない圧力が部屋を覆ったのだ。

 まるで固有種の魔獣と対峙しているかのような威圧である。

 それは目の前の温厚そうな少年から放たれていた。


(……こいつはとんでもないね)


 ザーラも顔には出さず、改めて理解する。

 この少年は、間違いなく怪物なのだと。

 それも、下手をすれば自分の師にさえ匹敵するほどの――。


「……そう威圧しないでくれ」


 そんな中、フェイが言う。


「私があの男に似ているのは私自身も不本意なのだ」


「……え?」


 コウタは少し驚いたように目を瞬かせた。


「あ。失礼しました。顔に出ていましたか?」


 コウタは自身の顔に触れた。どうやら威圧している自覚がなかったようだ。

 ザーラは呆れたように苦笑し、エリスたちは表情を強張らせた。

 思わず不快感を隠しきれなかった。

 たったそれだけのことで固有種に似た圧力が出てしまったらしい。


「君があの男を憎み、恨んでいることは聞いている」


 フェイが言葉を続けた。


「しかし、私はあの男と同一ではあるが別人だ。切り捨てられた枝に過ぎない」


「……そうですか」


 コウタは表情を真剣なモノに戻して、双眸を細めた。


「あなたはやはりあの男の複製体なのですか?」


「直球だな」流石にフェイも苦笑を浮かべた。


「あの男をよく知るのならば、当然の推測か。《水妖星》殿もいるしな。その通りだ。私はあの男の薬物開発のための試験体だ」


 一拍おいて、


「ただ、用済みになって廃棄処分にされた個体だがな。幸いか、もしくは不幸か。私は他の個体よりも実験の影響が少なく、今も生き恥を晒しているという訳だ」


 自嘲気味にフェイはそう語った。


「……フェイ」


 それに対し、ザーラがフェイの方に視線を向ける。

 そして眉をしかめて、


「そいつはあたしも初めて聞く話さね。もっと早く言え。まあ、ともかく」


 立腹したように腕を組み、ザーラは告げる。


「あんたがどう自分を思っていようが、今はあたしの参謀なんだ。自分を雑に扱うことは以後、禁止だからね」


「……善処しよう。我が団長」


 フェイはザーラにそう返してから、改めてコウタを見やる。


「あの男には私も思うところがある。正直に言えば、ザーラが抱く感情とは真逆のモノだと言ってもいい。それだけに同一視は控えて欲しい」


「……はい。失礼しました」


 コウタは謝罪する。


「一応の確認でしたが、お詫びします」


 それから、コウタはザーラ一派に視線を向けた。


「エリス=シエロ先輩と、マイアさんとも面識はあります。それであなたは――」


 コウタは、ザーラの奥に控えるツルギを見据える。


「傭兵ですね。騎士よりも戦闘向きの気配だ」


「……お前こそ何なのだ」ツルギは険しい表情でコウタを見据えた。


「こうして、ただ対峙しているだけで全身が緊張で強張る。お前のような化け物は戦場でもそうはいないぞ」


「ボクはそこまで怪物ではないですよ」


 コウタは苦笑を浮かべた。


「もっと強い人間はいます。それこそボクの兄。それと、ラゴウ=ホオヅキもたぶん今のボクよりもまだ強い」


「……比較対象に《双金葬守》や暴虐の魔人の名が出るだけで怪物だ」


 ツルギはそう吐き捨てた。

 ザーラの護衛であると自負しているからこそ、ずっと嫌な汗が滲んでいた。

 それに対して、コウタはかぶりを振った。


「それでも言いますが、ボクは怪物じゃない」


 一呼吸入れて、


「少なくとも、レオス=ボーダーに比べればです」


 コウタは指を組んでそう告げる。

 そして、


「自己紹介もここまでです。改めて本題に入りましょう。ザーラさん。ボクはあなたの企みを知りたい。そしてあなたはあの男について知りたいのでしょう?」









読者の皆さま。いつも読んでいただき、ありがとうございます!

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