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悪竜の騎士とゴーレム姫【第16部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第16部

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第三章 怨敵の残影④

 コウタとリーゼが異界から帰還したのは、それから二十分後だった。


「……リーゼ」


 アイリがリーゼに強くしがみついた。

 リーゼの顔色は元に戻っていた。いや、異界に行く前よりも遥かに瑞々しく、覇気に満ちているように見える。

 さらには現れた時のコウタに寄り添っていたその姿。

 先達者であるメルティアやリノはもちろん、未経験であるアヤメやエルにも何があったのかは一目瞭然だった。本来ならば愛の帰結であるはずのその行為に悪夢を持つリッカからすれば、少し羨ましくもあった。

 ともあれ、リーゼは完全に復調したようだ。

 アイリの頭を撫でるリーゼに、着装型鎧機兵(パワード・ゴーレム)を着たメルティアが近づき、


『良かったです。体調は戻ったようですね。リーゼ』


「ええ。メルティア」


 リーゼは頷いた。


「ご心配をおかけしましたわ。それに、その……」


 ジェイクと話し込んでいるコウタを一瞥してから少し言い淀むリーゼ。

 対し、メルティアは着装型鎧機兵(パワード・ゴーレム)の中で苦笑を零した。


『それも分かっています。リーゼも遂に、なのですね』


「まあ、そこは予定通りじゃな」


 腰に手を当ててリノも近づく。


「これで三人。もはや未来は確定したな」


「次こそ私の番なのです」


 アヤメも近づいてきてそう告げる。なお、エルとリッカも近づいてきた。

 アヤメは右手をリーゼに向けて、


「宝珠を渡すのです。次は私が使います」


「まあ、待て。犀娘」


 するとリノがアヤメを止めた。


「未来は確定した。ならば次の相手に推すべき者は――」


 そう呟いて、リッカの方に目をやった。

 リッカは「え?」と目を瞬かせる。


「うん。私もそう思う」


 と、告げるのはエルだった。


「リッカは精神的な傷をずっと抱えている。それは早く解決すべきだ」


 主君でもある少女はリッカの肩に手を置いた。


「お前の心の傷は愛されることでようやく癒される。だから次はお前なんだ」


「ひ、姫さま……」


 リッカは戸惑うような表情でエルを見つめた。


「むむ」


 一方、アヤメは呻いた。


「確かにそれを挙げられると弱いのです。けれど、その次こそは私なのです」


「いや。そこは私も退けないぞ。もう一度ジャンケンだ」


 と、アヤメの方を見据えてエルは言う。

 二人は「「むむむ」」と睨みあった。


「まあ、そうこうしている内にジェシカも合流しそうじゃがな」


 と、肩を竦めてリノが言う。


『ジェシカさんですか』


 メルティアはコウタの義姉の従者のことを思い出す。

 暗殺者でもあるらしい彼女は今、悪名高い《ディノ=バロウス教団》から退団するために義姉と一緒に本山に出向いてるはずだ。最後に会った時にそう聞いていた。そうして禊を済ませてから、改めてコウタの元に来るつもりらしい。


『流石に合流には時間がかかるのでは?』


「移動手段に関しては例外もあるからな。そこは分からん。まあ、そうじゃな」


 リノは、リッカとエル、アヤメへと順に目をやった。

 最後にリーゼの手を掴むアイリも一瞥して、


「流石にロリ神はまだ無理でも、それ以外の者は早々に結ばれるべきかもしれんな。ジェシカには悪いが、コウタを支えるためにも」


『……? どういう意味です?』


 メルティアが首を傾げた。

 リノは腕を組み、「うむ……」と言葉を詰まらせた。


「リノ=エヴァンシード。また秘匿ですの?」


 すると、リーゼがジト目を向けてきた。


「たぶん甘えるプロフェッショナルのメルティアは素で受け入れていたようですが、あなたは知っていたのでしょう? コウタさまの愛する者に対する貪欲さを」


「「「え?」」」


 と、リッカ、エル、アヤメが声を零してリノに目をやった。アイリは手を繋ぐリーゼの顔を見上げていた。

 対し、リノは「……む」と小さく声を零した。


「……まあ、のう」


 ややあって、装甲のため巨人のように見えるメルティアに視線を向けた。


「正直、わらわとしてはギンネコ娘があれにどうやって耐えたのかを知りたいのじゃが。コウタはたぶん、幼馴染のそなたに対してさえも容赦しなかったのではないか?」


『いえ、耐えるも何も普通に何回も意識を失いましたが?』


 と、メルティアは言う。


『抱っこは大好きですけど、コウタの顔が見えない体勢の時は少し不満です。自分が自分でなくなるような感覚は怖かったですし、コウタが全然私のお願いを聞いてくれなかったのも初めてでした。流石に十時間を越えた時はもう息も絶え絶えでしたが、愛の行為とはそういう激しいものなのでは?』


 始まりの花嫁たる少女の言葉に、一瞬全員が沈黙した。

 すでに経験済みであるリーゼは遠い目をし、リッカは片手で口元を押えて「じゅ、十時間?」と唖然としていた。アヤメとエルは目を丸くして絶句し、幼くとも知識はあるアイリは「……うわあ」と声を零していた。

 多種多様な反応の中、リノが深々と嘆息し、


「まあ、それはきっと人それぞれなのじゃろうな。わらわも男はコウタしか知らんから何も言えん。ともあれじゃ」


 一拍おいて、


「リーゼが無事帰還したことは喜ばしいことじゃ。無論、我らが主人であるコウタの帰還もな。さて。わらわの同胞たちよ。悪竜の花嫁たちよ」


 彼女はこう切り出した。


「いささか以上に面倒な状況にある。それをそなたらと相談したいのじゃ」









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