ループ・ループ
「今日はありがとね、アキ」
素直にお礼を言われ、とりあえず頷いておいた。
「明日もお世話になります」
ふふ、と笑って言う。
エミカって、こんな顔だったかな。こんな風に笑うっけ?
しばらく引きこもっていた幼馴染の笑顔が、少し見ないうちに大人びて、変わっていた。なんて、ありがちなことで。
でも、そんなエミカの姿に一瞬見惚れた自分がいたのも事実だった。
「大学、単位とか大丈夫かなー?」
そんな、とりとめのない会話を流れるままにしながら、2人で歩いていた。いや、2人じゃないな。2人+1匹。
いつも通る、交差点。
通りがかった時に、デジャヴ。既視感。なんだろう、前にもこんなことがあったような。
喋りながら歩くエミカが、この辺ではあまりない大きな交差点に差し掛かる。信号は……青。ただ、そう、ただ、右側から、信号無視の車。
何度も確か繰り返し
そのまま何も変わらず3度目を迎え
繰り返すたびにそれを忘れ
また1から始まる
エミカが歩く。エミカに向かって、まるで狙っているかのように車が走る。寸分違わず、今回も一緒だ。
俺は飛び出し、後ろからナゴの叫び声。
頭に踊る言葉は。
『大事な人が死ぬだろうが、お前は、決して助けてはならない』
忠告が予言になって、でも俺はそんなこととっくに忘れていて、俺が死んだとしても、何が起こるとしても、やっぱり助けたい人は目の前にいて、あぁ、つまり、だから。
エミカを突き飛ばした。
瞬間。
走ってきた車にぶつかるだろうと、予測して、やってくるだろう衝撃に身を固くする。
世界がゆっくり動くスローモーションになった。そして。
キュルキュルキュル……と、ネジか何かが回るような、そんな音がした。
視界が。景色が。時間が。思考が。
巻き戻る。
ビュンビュンと景色が飛ぶ。
やって来た車が猛スピードで後ろへ。巻き戻る。突き飛ばしたエミカが真後ろへ。巻き戻る。歩道へやってくる俺らが後ろへ。巻き戻る。
巻き戻る巻き戻る。
くるくるくるくる。
ビデオテープを反対に回したように。
過去へ過去へ。
遡る。
そうして視界は、
俺の意思とは無関係に暗転した。




