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ここは人類最前線7 ~魔性争乱~  作者: 小林晴幸
白昼堂々の勇者様拉致監禁事件
122/122

120.訃h……悲報、勇者様が肉食系女神様に誘拐されました

はいはーい、今回で『7』も〆ですよー。

でもお話はもうちょっと続きます。




 訃h……悲報、勇者様が肉食系女神様(むちむち)に誘拐されました。

 あの方の美しさじゃいつかこうなるんじゃないかと思ってましたけど……一体どんな前世の業を抱えれば、こんな大層な罰ゲームを享受する羽目になるんでしょうね?

 これが「美しさは罪」ってヤツなんでしょうか。

「惜しい人材を亡くしたね……得難い逸材(ツッコミ)だったんだけどなあ」

「勇者さん、良い人だったんですけどね」

「成仏しろよ」

 それぞれ好き勝手なことを、さわさわと囁く声が聞こえます。

 うん、こういう時、みんな割と薄情だよね。

 なんか誰一人として勇者様があの絶望的な運命から脱することは出来そうにないなって、そう考えているみたいです。

 相手が神ともなれば、そう思っても仕方ないんですけど。

「リアンカ、悪ぃ……勇者の捕獲、失敗しちまった」

「まぁちゃん。……ううん、まぁちゃんが頑張ってくれたの、私もわかるよ」

 収拾のつかなくなった、試合場の中。

 まぁちゃんが申し訳なさそうに首の後ろを掻いています。

 気まずそうな様子ですけど、本当に気にすることはないんですよ?

 だって。


「困っていたら、どんな状況だろうと助けになる。それがお友達ってものですよね」


 だって、私は勇者様のお友達ですから。

 それは勇者様が天の御園に拉致されたって、変わる事じゃありません。

 相手がどんな状況に陥っていようと、何処にいたって。

 それがこの世界じゃなくたっても。

 困っていたら手を貸して、救いを求めていたら……助け出す。

 それが友情ってヤツだと思うんです。

 だから。

 私は、勇者様のお友達だから。

「勇者様を助け出すのは、私の役目……私がやるべきことだと思うんです!」

「おいこらちょっとリアンカさぁん!? お前、何考えてやがる!?」

 別に助けてくれなんて頼まれちゃいませんけど。

 状況と経緯を考えると、まず間違いなく勇者様は救いを求めているはず。

 その助けてって気持ちを、私に向けてはいないかもしれませんが。

 ……私に助けてもらおうとは、思っていなくても。

 私が助けたいんです。

 私が、私の友達である勇者様を、助けに行きたいんです!

 誰が何と言おうと、私は絶対に勇者様を助けに行きます。

 そして勇者様に怖い思いや哀しい思いをさせた女神の髪を毟ります!

 それが友達甲斐ってヤツだと壮語してやりましょう!

「まぁちゃん、私ちょっくら天界まで勇者様掻っ攫いに行って来る!」

「待てこら。んな、さもお気軽手軽にさっさか行けるかのように言うんじゃありません……! それは、リアンカ、お前が考えるよりも確実に凄まじく大変なことなんだぞ!? ただの村娘のお前がやれるかよ!」

「でも、だって、私は勇者様のお友達なんです! だったら助けに行かないと……勇者様の貞操が!」

「もう手遅れだ。諦めろ」

「助け出せたら遅すぎるってことはないと思います! なんだったら忌まわしい記憶の一切合切が頭から消し飛ぶようにお手伝いするし!」

「だめ。俺はリアンカがそんな苦労する必要ねーと思います」

 私がやるって、そう言ってるのに。

 まぁちゃんは、私には無理だ駄目だと反対のご様子。

 この分じゃ、賛成はしてくれそうにありません。

 ずっとずっと押し問答、暖簾に腕押し糠に釘。

 このままじゃ、埒が明きません。

 だから、ついカッとなって行ってしまいました。


「だったらまぁちゃんが苦労してよ! 私の代わりに!」


 うん、私、思ったんです。

 私に無理だ無理だって言うんなら、私よりずっと可能性のあるまぁちゃんが手を貸してくれたら良いのになって!(願望) 

 私の言葉に、まぁちゃんがポカンとします。

 わあ、まぁちゃんがこんな顔するの珍しいー(棒)。

「おっと暴言が飛び出したー」

「あれは……お強請(ねだ)りに入るんでしょうか」

「陛下がいくらリアンカちゃんに甘くっても、アレはどうだろ」

 なんか外野がひそひそ言ってますけど、気にすることはありません。

 こうなったら、構うことはありません。

 まぁちゃんにお願いしましょう!

「私には無理って言うんなら、まぁちゃん手伝って! 飴ちゃんあげるから!」

「おいおい飴ちゃんかよ……どんだけ大変だと思ってんだ、お前」

「リャン姉様、せっちゃんがお手伝いしますの。ですから飴ちゃん下さいですのー」

「わぁい、せっちゃんが釣れたー」

「っておいこら! 待て、待て待て待て! 余計に待て、お前ら! リアンカとせっちゃんの二人で行かせるなんて心配過ぎる……心配過ぎて俺の頭が禿げちまったらどうしてくれる!?」

「まぁちゃん……いくら止めたって、私は結局行くよ。行きますよ? そこでまぁちゃんに質問です!」

「な、なんだよ……」

「まぁちゃんは、私を一人で……ううん、もしかしたら私とせっちゃんの二人だけで、天界に行かせられますか!」

「行かせられる訳ねーだろ馬鹿!! 可愛いお前らだけで、とか論外だ!」

「だったら、黙って行かせられないんだったらさ、まぁちゃんも一緒に行くしかないよね! まぁちゃんが一緒に来ないんだったら、私一人で突撃しちゃうんだから!」

「く……っ畜生、強請(ゆす)るつもりか!」

「まぁちゃんも考えてみてよ。いくら止められたって、隙を狙って私は勇者様を助けに行くんだよ? それを黙って見ていられないんだったら、まぁちゃんも一緒に行って、私が危なくない様に手を貸すしかないよねってだけのお話」

「あああああああああああっ」

 あ、まぁちゃんが頭を抱えました。

 これは、もう一押しか……!?


 どっちにしろ、実はまぁちゃんも一緒に行こうって誘うつもりだったんですけどね。

 だって私だけで助けに行くより、魔王様(まぁちゃん)に一緒に行ってもらえた方が勇者様を救出する確率上がりますし。

 むしろまぁちゃんが一緒に行かないことには、勇者様を助け出せるとも思えなかったので。

 だから、出来れば快く同行を決意してほしいんだけど。


「あ゛―……っもう、仕方ねえな! わかった、わかったよ! リアンカが行くってんなら、仕方ねえ。自主性を尊重して、まぁちゃんも一緒に勇者助けに行ってやるよ! だって放っておけねえし!」

 

 結論。

 やっぱりまぁちゃんは私とせっちゃんに、とっても甘い訳で。

 まぁちゃんが危険に飛び込もうとする私を放っておける筈もなく。

 私に意志を曲げる気がこれっぽっちもない以上、最終的にまぁちゃんが折れるしかありませんよね?


 そんな訳で、こんな訳で。

 まだ、武闘大会は全部終わった訳じゃなかったんですけど。


「あの兎の彼女をお土産に連れて帰ってくれるとお約束いただけるのでしたら……陛下の代行、務めさせてもらいますけど?」


 ザッハのおじさんが快く魔王代行を申し出てくれたので、魔族の大イベントではありますが……魔王のまぁちゃんが抜けることに、実務的な問題は消えました。

 ……うん、いつの間にか消えてたんですよね。あの兎。

 多分、勇者様が誘拐されるどさくさに紛れて天界に逃げたんだと思います。

 さりげなくザッハのおじさんも捕獲の手は伸ばしたらしいんですが、急なことだったので神の端くれを拿捕出来るような手段が整えられなかったらしく。

 惜しくも逃した、と気落ちした様子でした。

 そんなザッハのおじさんを励ますべく、私とまぁちゃんは力強く『お土産』の約束をしました。

 いい加減、あの兎に苛っとしていたって理由もありますけど。

 長く独り身でいたザッハのおじさんも、そろそろ幸せになって良いと思うんですよね。

 ……一方的な幸せになる可能性も否めませんが。

 そこまでは、私も知ったことではありません。そこから先はザッハのおじさんと某兎の鋭意努力次第と目を逸らします。


 状況を見ていた魔族の皆さんは、急遽天界への殴り込みを決意した私達を大いに励まして下さいました。

 すっごい盛大な野次でしたとも。

 というか「俺も連れてけー!」系の声が多くて多くて……全部に対応していたら魔族の一大遠征と化しそうです。いえ、確実に化します。

 そうなったら準備に時間もかかりますし……その分、勇者様の精神的外傷(トラウマ)が…………可哀想なことになります。

「っつうか、戦争けしかけて勇者質にでも取られりゃ世話ねーだろ。んな他の奴らまで面倒見てやる気はねえ」

 まぁちゃんが、心底面倒臭そうに言いました。

 その魔王陛下のお言葉に、魔境の血生臭い面々は不満たらたらだったんですが。


 まぁちゃんが不満を垂れる観衆に向かって、声高らかに宣言したら、それも全部黙りました。


「こっちの用件が先だっつってんだろ! 天界との戦争は帰って来て武闘大会も全部終わったら改めてじっくりやってやっから、それまで準備でもして待ってやがれ!!」


 みんな黙りました。


 うん、お楽しみは後に取っとくべきだよねって。

 魔族の皆さん、さわさわ囁き合ってましたよ。

 取敢えずまぁちゃんの帰還を待つ間、皆さん大人しく武闘大会の進行を進めておいてくれるつもりみたいです。

 ……武闘大会が終わってもなお、魔王(まぁちゃん)が帰らなかったら……その時は迎えに来たって大義名分掲げて、魔族のみんなで天界に殴り込みかけてやろうぜって言いあってましたよ。

 うん、みんな魔族さん達は魔族さんだなぁって思いました。

「チッ……余計な手間取らせやがって」

「まあまあ、まぁちゃんってば」

 そう言いつつも、まぁちゃん自身が天界との戦争を待ち切れずにうずうずしていること、私は気付いていました。


 さて、これで話は纏まりました。

 ハテノ村の村長である父さんに話を通してはいませんが、纏まりました。

 話を通そうとしたら確実に止められる気がするので、書き置きだけして、このまま天界に行こうかと思います。

 ……まあ、私の保護者役にまぁちゃんが付く場合、割と何処に行くにも父さん達は放任なんですけどね。

 さあ新たな問題が出ない内に行くぞーと、思ったんですが。

 そこでりっちゃんから、待ったの声がかかりました。

「さも簡単そうに天界へ行く、と言っていますが……陛下もリアンカさんも、天界に行く術がお有りなんですか?」

「「あ」」


 おっと、盲点。

 

 行くぞ行くぞと気ばかり急いて、肝心の手段についてが……そう、頭からスポーンと抜け落ちておりました。

 魔境に伝わる話によると、天界はこの地上とは次元のちょっとずれた異層にあるという話。

 それこそ、あの女神みたいに見えても触れられない何所か、みたいな感じだと思うんですが……


 ……かつての魔王は、何度も何度もそれはもう何度もしつこいくらいに天界へと襲撃を重ねました。

 天界攻めが大好きな魔王が、過去には何人もいたという話。

 ですが天界の方は魔境の戦闘狂さん達の襲撃にほとほと困り果てていたらしく……襲撃をかけられる度、天界の場所を変えていたと聞きます。

 つまり、最後に魔王が天界を攻めた後にもお引っ越ししているはず。

 かつての魔王さん達がどうやって天界の場所を嗅ぎつけて乗り込んでいたのかは知りませんが……その術を知らない、私達としては。

 一体どうやって乗り込んだものかと。


 頭を悩ませ、悩ませ、途方に暮れる。

 えっと私達、一体どこを目指して何処にどう行けば良いんでしょうね?


 ――誰か、天界に詳しい人っていましたっけ?


 難しい顔で唸ってしまう、私のポーチの中で。

 キラリと、銀色に冷たく。

 解けない氷が、怜悧な輝きを零した。





 → 『ここは人類最前線8 ~囚われの勇者様(ヒロイン疑惑)を救え!~(仮)』に続く。


 『8』の開始は来年1月を予定しています。

 一応、『8』で本編は〆る予定。

 天界へは少数精兵での出陣となります。

 リアンカちゃんを筆頭に、まぁちゃん、せっちゃんの魔王兄妹。

 それからロロイとリリフの若竜コンビ。

 あと、りっちゃんと画伯。

 つまりはリアンカちゃんの子供の頃からの遊び相手グループ、という……もしもこれに追加するとしても、一人か二人程度かと。

 そして天界では、勇者様に加護を与えている神々とそれぞれリアンカちゃん陣営からの代表がタイマン勝負を行うことに……。

 あ、あと赤髪のあの人が再登場しますよー。天界ですから。

 今の内に入れてほしいネタ、出してほしい神様等々ありましたら、ご要望下さい。

 ちなみにラッキースケベの神の登場は今のところ予定しておりません。


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