【幕間①】
飛ばしても影響はない箸休めです。そもそも何で合コンにいたのかという話です。
会食もとい合コンから3週間程前のこと。
side玲。
『玲、もうすぐ日本帰って来るよね?』
古い友人、伊都からの突然の電話。
中国語の長期撮影から直接向かったハリウッドの撮影も終盤に差し掛かり、脳は焼かれつつあった。
久々に日本語を話したいと思っていた頃、伊都ならいいかと床に転がったまま電話に出た。
『うん。東京には1ヶ月ぐらいはいると思うけど。』
『ほんと!それならお願いがあるの!』
嫌な予感しかしなかった。
『何?』
『気になってる人が来る会食をね、絵里がセッティングしてくれてね。』
嫌な予感が的中する予感がした。
『うむ。』
『一緒に来て欲しいの!』
『何でそうなんのよ!?』
ほら見ろ。
『だってどんな人か私は分かんないもん!』
『……』
天井を見上げ、伊都が過去に惚れた男達を思い出していた。
業界の中でも稀有な純粋で可愛い素直な女だが、惚れるのは見事に詐欺師、DV、浮気男とロクなことがない。
『いや待って、まず情報。何者なの相手は。』
『バスケ日本代表のキャプテンなんだって。』
『はあはあ。誰だっけ……』
『深見さん!』
『それだ。話したことは?』
『バラエティで一緒になってその時少しだけ……』
確かバスケの日本代表は話題になっていたはずだ。
電話だけでは落ち着かない玲は台本にあれこれ落書きしながら懸命に顔を思い浮かべてみた。
『どこがよかったの?』
『私の話が滑りそうだった時フォローしてくれたの。』
『おお、まともな理由だ。』
『ちょっと!』
『今までの理由覚えてる?流石にぶつかって睨まれて惚れたのはびっくりだよ。』
『だ、だってカッコよかったの!』
『わけわからん。で、合コンに来て欲しいと。』
『会食!』
何が違うんだ。
『写真見るだけでいいじゃん。ある程度分かるよ。』
『ダメなの!向こうに玲のファンがいてね。来るって言っちゃったから。』
『何だと!?』
『お願い!私嘘吐きになっちゃう!』
『くっ……』
これがこの古い友人でなければ断っていた。何ヶ月連絡を放置しようといつも同じ笑顔で迎えてくれる貴重な友人でなければ。
『……ダメ?』
『……いい。行く。』
『ほんと!』
『適当に私は端に帰るからね。』
『うん!でも玲、ほんとに恋愛する気ないの?』
『暫くいいかな……疲れた。』
『すっごい優しそうだったのにね。ハリウッドの王子様、ダメだったの?』
『王子ではないね。優しいのは間違ってないけど。相性の問題なんじゃない。』
『玲は色々見えちゃうからなあ。疲れるのかな。』
『そうかもね。また日付と場所送ってよ。ていうか他誰来んの。絵里ちゃんだけ?』
『ううん、あと弥生が来るよ。』
上がる同年代の女優達の名前。会うのはいつ以来か。
『ああ……仲良かったっけ?』
『絵里通じて仲良くなったの。筋肉好きなんだって。』
『そりゃまた見かけによらない。』
『フェチらしいよ。写真飾ってるんだって。』
『筋金入りじゃん。バスケよりボディビルの方がいいんじゃないの。』
『なんと外神秋が来るんだって。だから見たいって。』
『ああ、外神秋……マジ?』
テレビを見ない玲でも知っている。というか日本で知らない人の方が少数ではなかろうか。
『深見さんが連れて来るみたい。高校時代の後輩だから。』
『こっちも見た目によらないねえ。まあ何でもいいや。じゃあその時ね。』
『うん。またね。』
電話を切ると、ベッドに潜り込んだ。
まさかその男と何度も会う羽目になると思っていなかったわけだが。
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