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結論から言えば、この人と結婚する。  作者: 絃


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第六話 時期尚早だと、結論づけた。


ハンドルに突っ伏していると、ポケットで暴れる携帯に慌てて頭を上げた。


「もしもし?」

「あ、玲?聞いたよ!外神さんとデート行ったって!」

「デートぉ?」

「違うの?」

「少なくとも私の認識してるデートではない。」

「でもご飯行ったんでしょ?」

「取り調べね。伊都は?深見さんとどうなの?」

「この前電話してね、今度ご飯行くことになって……!」


顔を赤らめた伊都の顔が思い浮かんだ。先程自分が顔を赤らめた理由を思い出した。


「……うん、私のはデートじゃない。」

「何急に。」

「いや、こっちの話。よかったじゃん、上手くいきそうで。」

「玲のお墨付きだし今回はほんとに上手く行くかも!」

「楽しんで来なよ。」

「何着て行こう……深見さんの好み分かんない……」

「聞いてみ……いや、無理だな……」

「深見さんの連絡先知ってるの?」

「知らない。外神さんに聞いてもらおうかと思ったけどダメだ。全部バレる。」

「何で?」

「恥の概念が無いからよ。あのワンピは?可愛いじゃん。」

「概念?やっぱりあれかな……気合い入り過ぎじゃない?」

「いつも可愛いの着てくじゃん。似合ってるし深見さんああいうの好きそう、なんとなく。」

「玲のそれ外さないからそれでいく。」

「間違ってても恨まないでよ。」

「恨まない恨まない。ねえ今度2人で遊ぼ。」

「いいね、また向こう行く前に行くか。」

「ショッピングして食べる?」

「いいよそれで。空いてる日送るわ。」

「うん、またね。」


さて、帰ろうかとレバーを掴んだ。

車の中に静寂が戻る。


ふと、目の前に横切る紫の影。ぞわりと背筋が震えた。

幸せそうな顔で夫と歩く貴婦人の指には妖気を纏った指輪。

不思議なことにああいった物程本人に外した方がいいと言えば大事な物だと嫌がる。


(あれはかなりキツいな……)


視えるのは生まれつきだ。視えたところで、何が出来るわけでもない。

ただの面倒事だ。


「……寺、行くか。」


何の因果か、玲を拾った師もまたよく視える。


たまには酒でも持って行くか。そう決めると走り出した車の行き先が決まった事にホッとした。



————————



「おかえりー遅かったじゃん。女?」


実家のソファにだらりと伸びてスマホを見ている女は秋にとって唯一の天敵と言えよう、姉の茜である。


「だったら何だ。」

「は!?」


スマホを落としそうな勢いでソファから飛び起きた茜はまるで幽霊でも見たかのような顔をしている。

 

「だから何だ。」

「え、マジなの?」

「お前が思っているような関係じゃない。」

「へえ……誘われた?」

「違う。」

「じゃ、誘ったんだ。」

「必要だったからな。」

「お母さん聞いた!?秋が女誘ったって!」

「聞いてるわよ。話が合ったんじゃないの。」


洗い物をしている母は大して気にした様子もない。

 

「はあ……寝る。」

「可愛くなーい。少なくとも香水つけて化粧の濃い女じゃなさそうね。」

「何故分かる。」

「匂いしないもん。」


この女の嗅覚はどういうわけか異常だ。


「どの道匂いが移るほどの香水も化粧もごめんだ。」

「なら気に入ってんじゃん。」


何故その結論に至るのか、全く理解できないが。


「付き合いきれん。これ以上聞くな。」

「お風呂あっため直しなさいね。」

「分かった。」

「あーあ、その鉄面皮じゃ折角捕まえても逃げてかれるんじゃない。」

「逃げられたのはお前の方だろう。」

「あれは私が振ったのよ。」

「茜、秋。あんた達いくつなの。」

「……」


鬱陶しいことこの上ない女を放置し、風呂に入ることにした。


日本の風呂は狭い。湯船に半分も浸からないため、早々に出ることが多かった。

シャワーを浴びながら、何の意識もなく呼んだ名前を、脳内で小さく反芻した。


『玲』


名前を呼ばれた玲が驚いた顔をしたからか、単にレイという名前の響きがいいのか。

基本人の名前を呼ぶ時、何かを考えることはない。


役とやらに沈み込んだ時、人に見たことのない程冷たい目をしていた。

何かしらの経緯があることは確かだろう。

アメリカにもよく来ているなら、時間はある。



結論を出すには時期尚早だと、秋は結論づけて湯を止めた。

 

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