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桜の歌  作者: 挑戦王
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## 第二十二章 アンコール

## 第二十二章 アンコール


ライブは、

気づけば終盤へ差しかかっていた。


汗で前髪が濡れている。


喉も少し痛い。


でも、

春山桜は笑っていた。


こんなに全力で、

“生きてる”と感じたのは初めてだった。


---


「次が最後の曲です」


その言葉に、

客席から「えぇー!」という声が上がる。


桜は少し笑う。


「ありがとう」


ライトが静かに落ちる。


会場が暗くなる。


桜はギターを握り直した。


最後の曲。


ライブのために書いた新曲。


『明日へ』


桜はゆっくり口を開く。


「この曲は、“まだ途中の人”へ書きました」


静かな空気。


誰もが耳を傾けている。


桜は続けた。


「俺も、まだ全然完成してません」


小さな笑いが起こる。


「不安だし、迷うし、逃げたくなる日もあります」


その声は、

まっすぐだった。


「でも、それでも生きたいって思えたから」


桜は客席を見る。


「だから――一緒に、明日へ行けたら嬉しいです」


ギターを鳴らす。


静かなイントロ。


そして、

優しく歌い始めた。


---


“僕らはまだ途中だ

傷だらけのままでいい

泣きながらでも

明日へ歩いていける”


---


会場が静まり返る。


桜は歌う。


一人じゃなかった。


苦しい夜も、

支えてくれる人がいた。


だから今、

ここで歌えている。


サビ。


桜は声を張った。


---


“君が今日を越えたなら

未来はきっと優しくなる”


---


客席で涙を拭う人が見える。


手を握りしめて聴いている人もいる。


桜の胸が熱くなる。


届いている。


ちゃんと。


歌は、

人の心へ届いている。


最後のフレーズ。


---


“生きていてくれてありがとう”


---


音が止まる。


静寂。


数秒の沈黙。


そして次の瞬間。


会場が揺れるほどの拍手が響いた。


歓声。


拍手。


涙声。


桜は息を切らしながら立ち尽くす。


目の奥が熱い。


こんな景色、

昔の自分は想像できなかった。


桜は深く頭を下げた。


「ありがとうございました!」


ライトが落ちる。


桜はステージ袖へ戻った。


その瞬間、

全身の力が抜ける。


「……終わった」


高瀬が笑いながら肩を叩く。


「お疲れ」


スタッフたちも拍手していた。


蓮は号泣している。


「お前マジで最高だったぁぁぁ……!!」


「泣きすぎだって」


桜も少し笑う。


その時だった。


客席から大きな声が響く。


---


「アンコール!

アンコール!」


---


一人。


二人。


そして会場全体へ広がっていく。


---


「アンコール!

アンコール!」


---


桜は目を見開いた。


震える。


胸が苦しいほど熱い。


自分の歌を、

まだ聴きたいと思ってくれている。


高瀬が笑った。


「行ってこい」


桜は静かに頷く。


そして再び、

ステージへ戻った。


歓声が爆発する。


桜はマイクを握り、

涙を堪えながら笑った。


「……ほんと、ありがとうございます」


声が震える。


でも、

それを隠さなかった。


「最後に、一番最初の曲を歌います」


ギターを抱える。


始まりの曲。


誰にも届かなくても歌っていた、

あの日の歌。


桜はゆっくり弦を鳴らした。


---


“誰にも言えない夜を

ひとりで抱えてた”


---


駅前で、

震えながら歌っていた自分。


未来が怖かった自分。


消えてしまいたかった夜。


全部、

この歌の中にある。


でも今は違う。


客席には、

自分の歌を待ってくれる人がいる。


大切な人たちがいる。


桜は涙を流しながら歌った。


---


“それでも君が今日を生きたなら

それだけでいい”


---


会場中が、

静かに歌を聴いていた。


その景色を見ながら、

桜は思う。


人生は、

苦しいことばかりじゃない。


ちゃんと、

誰かと繋がれる。


未来は、

ちゃんと変えられる。


歌い終わる。


大きな拍手。


光の中で、

春山桜は笑っていた。


心から、

“生きていてよかった”と思いながら。


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