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魔法と魔人と王女様――情報の魔人と重力の魔法で王女と一緒に宇宙を攻略(ハック)――  作者: 月立淳水
第六部 魔法と魔人と終焉の奇跡

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第六章 それぞれの明日(4)


「さて。セレーナ、これから、どうするつもりだね。政治の話だ」


「ええ、あの通信線で宣言した通り。エミリアは、ファレンへの干渉をやめます。カロルは、ファレン共和国の自由開発に任せたいと思います」


 セレーナと陛下の会話は続いている。


「ふむ、それが道理だろう。となると、ファレンに勢力を広げた、我が国子飼いの政治結社は、解散ということかな」


「それも、彼らの自由意志に任せます」


 陛下は、なるほど、と首を縦に振る。


「もちろん、彼らが変わらずに投資援助を求めるなら与えるつもりですし、技術の協力を求めるなら、当然、エミリアだけがそれを与えることのできる国となりましょう」


「……なるほど、セレーナ、ちょっと見ぬ間にお前も策士になったな。マジック鉱の採掘技術はエミリアだけの秘密だ。エミリアの技術供与なくては、カロルの開発もままなるまい」


 陛下は低く笑った。


「摂政様にはいろいろと教わりましたから」


 セレーナも負けずに黒い笑いを漏らす。

 セレーナがそこまで裏の考えを進めていたなんて。

 全く驚くばかりだ。

 確かに、ファレン共和国の自発的な開発に任せる、という建前上、カロルの開発に対するロックウェルかエミリアの手助けは間接的になるしかない。

 ところが、マジック鉱採掘技術に関して一日の長のあるエミリアは、すでに一歩、ロックウェルを出し抜いているのだ。

 自らを潰すことで地球にでしゃばらせ、ロックウェルとエミリアを等距離に退かせたことで、結果的にエミリアが有利になっている。

 セレーナのプランは最初からここまで織り込んでいたのだろうか?

 僕らにも内緒で。

 なんだか、古代の天才策略家を見ているようだ。


「でもね、パパ。実のところ、カロルからマジック鉱は出ないんじゃないかと私は思ってるの」


 いたずらっぽく笑いかけるセレーナ。


「そんな確信が? ……ふふっ、では、私もしばらくは我が娘の確信に乗ろうか」


 ……セレーナの確信だって?

 それはもしかすると、全知の魔人、ジーニー・ルカの確信なのかもしれなくて。

 彼女が今口走ったことは、恐ろしいことなのかもしれない。

 エミリア国民は自らを苦難に置く決断をした強い民となり、そのうえ、結局はマジック鉱の独占は永劫に続くのかもしれないのだ。

 エミリアは、かつて無いほどしたたかな国に変わっていく。


「ともかく、エミリアの改革を進めるには、お前には地位が必要だ。さてそこで、次にお前自身の話だ」


 陛下は、見下ろすようにセレーナを見つめた。


「ウドルフォが譲るつもりらしい摂政の地位を、継ぐつもりはあるかね」


「……はい、彼の言うとおり、私が民に新たな理想を与えてしまった以上、その責に見合う地位につかねばならないことは、覚悟しています」


「……だが、お前もまだ十六だ、人生を決めるには早すぎるだろう。お前自身の選んだことだ、パパがとやかく言うことではないが、その若さでその身を国に捧げるお前が……」


 と言って、言葉を繋げず、うつむいた陛下。

 僕は、彼が何を言いたいのかが、分かる。

 たった十六の女の子が、国を背負って、二度と逃げ出せない道に踏み込もうとして。

 まだ、たくさんの楽しいことを経験できるかもしれない十代の半分を残して。

 それは、とても不憫なことに、彼の目には映るのかもしれない。


 ――でも。


「パパ、心配ありがとう。でも、私はそうは考えてないの。私はずっと、ただエミリアを次代に繋ぐためだけの、次の王の母になるだけの、そんな存在に過ぎないと自分のことを思ってた。でも、ジュンイチに会って、変わった。自ら選んでもいいんだ、って。だから、自分で選ぶことにしたの。それは、この国を導いて、人々がもっと自由に強く暮らせる国にして、王家だの貴族だのを縛っている馬鹿らしい慣習もどんどん無くしていって。そのために、摂政っていう地位を使えるなんて、とても素敵なこと」


 セレーナが笑顔で言い終わると、陛下は大きくため息をついて背を伸ばし、小さな娘だと思っていたのにな、と小さくつぶやいた。

 それから、両手で顔をごしごしとこすって、そのまま頭をなでつけ、また身を前に乗り出した。


「セレーナの気持ちは分かった。摂政となって至らぬパパを援けてくれ。では、早速、摂政就任の儀を――」


「パパ。そのことだけど、もうちょっと待って」


「なんだ、まだやることが?」


 陛下が訊き返すと、


「ええ、国務扱いの留学先の学校の期末考査をすっぽかしてきちゃったから、それが終わったら」


 セレーナは再びいたずらっぽく笑った。


挿絵(By みてみん)


***


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