第48章 ④
結婚すると決まれば、決めることがある。
いつ結婚するのか。
式はするのか。
何が必要なのか。
それから。
「どこに住むの?」
夕飯の時に聞いた。
サラが私を見る。
ニコも私を見る。
ルークまで私を見た。
何だろう。
「ここだけど?」
サラが答えた。
「ここ?」
「うん」
私はニコを見る。
「ニコも?」
「そのつもりだけど」
そうなのか。
私は少し考えた。
結婚したら家を出るものだと思っていた。
カイルも出た。
ミラも出た。
だから、この二人もそうするのだと思っていた。
「家、探さないの?」
「何で?」
今度はサラに聞かれた。
何で。
「結婚するから?」
「ここに部屋あるよ?」
ある。
二人ともある。
「でも、夫婦になるんでしょ?」
「うん」
「ずっと別々の部屋?」
サラとニコが顔を見合わせた。
そこまで考えていなかったらしい。
結婚するところまでは考えたのに。
「部屋なら一つ空いてるよ」
ルークが言った。
私はルークを見る。
「どこ?」
「カイルが使ってた部屋」
そうだった。
今は物置に近い。
「ミラの部屋も空いてる」
ニコが言う。
「じゃあ二つあるね」
サラが言った。
何か違う気がする。
「二つも使うの?」
「一つ寝る部屋にして、一つは本とか置けばいいんじゃない?」
ニコが答えた。
本。
多分、かなり場所を取る。
なるほど。
私は納得した。
「じゃあ片付けないとね」
「手伝うよ」
サラが言った。
話が終わった。
早い。
私はご飯を食べる。
しばらくして、気付いた。
「ニコ」
「何?」
「結婚しても代官府?」
「もちろん」
「サラも畑?」
「うん」
そうだよね。
どちらもここから通える。
むしろ引っ越したら不便になるかもしれない。
「じゃあ、ここに住む方が楽か」
「そうだよ」
サラが当然のように答えた。
なるほど。
私はルークを見る。
「ルークは?」
「何が?」
「出ていく予定ある?」
「ないよ」
即答だった。
そうか。
「結婚したら?」
聞いてみた。
ルークが箸を止めた。
「何で結婚することになってるの?」
「例えば」
「相手いないよ」
知ってる。
「できたら?」
ルークは少し考えた。
「その時考える」
出ていくとは言わなかった。
どうやら、まだしばらくこの家は静かにならないらしい。
昔は五人の子供がいた。
カイルとミラが出ていって、少し静かになった。
そのうちルークも、サラも、ニコも出ていくのだろうと思っていた。
そうしたら、この家は広くなる。
私は一人になる。
イナはいるけど。
そんなことを、どこかで考えていた。
でも。
サラとニコは出ていかない。
ルークも出ていく気がない。
「おばさん?」
サラに呼ばれた。
「何?」
「嫌だった?」
「何が?」
「ここに住むの」
私は首を振った。
「別に」
嫌ではない。
むしろ。
少しだけ嬉しい。
言わないけど。
「ただし」
三人を見る。
「結婚しても家のことはやってね」
「うん」
「分かってる」
「俺も?」
「住んでるなら当然でしょ」
ルークが黙った。
私はご飯を食べる。
結婚しても、あまり変わらないのかもしれない。
人数も減らない。
多分。
悪くない。




