第48章 ③
翌日、カイルとミラが来た。
二人とも一人だった。
子供はいない。
まただ。
去年も、何かある時は子供を置いてきた。
「子供たちは?」
「家。今日は妻が見てる」
「うちは旦那」
なるほど。
私はお茶を入れた。
サラとニコもいる。
ルークもいる。
昨日の今日なので、少し空気がおかしい。
特にルーク。
別に怒ってはいない。
多分。
ただ、ニコを見る回数が増えた。
今までだって同じ家に住んでいたのに。
今さら見張ってどうするのだろう。
「それで?」
カイルが座る。
「話って何?」
サラがニコを見た。
ニコもサラを見る。
またそれをやる。
昨日も見た。
「私たち、結婚することにした」
サラが言った。
カイルが頷いた。
「やっと決めたか」
ミラも頷く。
「おめでとう」
私は二人を見た。
何かがおかしい。
ルークも気付いたらしい。
「ちょっと待って」
カイルを見る。
「知ってたの?」
「何を?」
「二人のこと」
「まあ」
カイルが答えた。
ミラも普通に頷いた。
私はお茶を置いた。
「いつから?」
今度は二人が私を見る。
「去年?」
カイルがミラを見る。
「もっと前じゃない?」
「そうだっけ?」
「多分」
待って。
「去年って、あのお守り作ってた頃?」
「その頃には知ってたよ」
ミラが答えた。
やっぱり。
私は去年のことを思い出す。
カイルが小さな包みを持ってきた。
ミラがサラの部屋へ入った。
ルークも石を持っていった。
ニコも一緒にいた。
全員で何かを隠していた。
あれはお守りだった。
それは分かった。
でも。
「もしかして、あの時から?」
サラが首を傾げた。
「何が?」
「二人」
「違うよ」
即答だった。
違うらしい。
「じゃあ、いつから?」
サラとニコが黙った。
まただ。
個人情報らしい。
「まあいい」
聞かない。
本人たちが言いたくないなら、それでいい。
ただ。
私はカイルとミラを見る。
「二人は知ってたんだね」
「うん」
「何で私に言わなかったの?」
カイルが不思議そうな顔をした。
「本人たちの話だから」
正しい。
とても正しい。
私が普段言っていることだった。
何も言えない。
ミラが笑っている。
「おばさん、自分でいつも言ってるでしょ。人のこと勝手に話すなって」
「言ってるね」
「だから言わなかった」
「そうだね」
仕方ない。
私はお茶を飲んだ。
ルークがまだ納得していない。
「俺も知らなかった」
「お兄ちゃんに言ったら面倒だから」
サラが言った。
「何で?」
「昨日みたいになるから」
ルークが黙った。
その通りだった。
カイルが笑う。
「ルーク、何したの?」
「何もしてない」
「何もしてない人の顔じゃないけど」
「してない」
ミラまで笑い始めた。
ニコも少し笑っている。
ルークだけ面白くなさそうだった。
私はカイルを見る。
「それで、いつ頃から気付いてたの?」
「気付いたっていうか」
カイルがニコを見る。
ニコが少し嫌そうな顔をした。
「言わなくていいよ」
「何?」
気になる。
カイルが笑った。
「ニコが相談してきた」
へえ。
私はニコを見る。
「相談?」
「ちょっとだけ」
「誰に?」
「カイルとミラ」
「私には?」
「してない」
「ルークには?」
「してない」
ルークの顔がさらに険しくなった。
なるほど。
相談相手は選んだらしい。
正しいと思う。
特にルークは駄目だ。
「何を相談したの?」
「おばさん」
ニコが止めた。
「個人情報?」
「個人情報」
仕方ない。
私は諦めた。
カイルとミラが笑っている。
サラも笑った。
ルークはまだ何か言いたそうだった。
でも、言わなかった。
私はお茶を飲む。
子供たちは、私の知らないところでもちゃんと話をして、考えて、自分たちで決めるようになったらしい。
少しだけ寂しい。
でも。
それでいい。
全部知っていなければならない年齢は、とっくに過ぎている。
「それで」
私は二人を見る。
「結婚するなら、いつ?」
サラとニコが顔を見合わせた。
「まだ決めてない」
今度はニコが答えた。
「じゃあ、それを決めるところからだね」
「うん」
私は頷いた。
そこから先は二人の仕事だ。
私はご飯を作る。
頼まれたら手伝う。
それくらいでいい。
カイルが菓子に手を伸ばした。
ルークも取った。
ニコも取る。
いつもの光景だった。
ただ一つ。
サラがニコの隣に座っている。
今までも何度も見たはずなのに、今日は少し違って見えた。
そういうものなのかもしれない。




