第47章 ⑧
翌日、朝から全員いる。
カイルとミラまで来た。
昨日もいたのに。
カイルは今日は子供を連れてきていない。ミラも一人だった。
「子供たちは?」
「家」
「今日は旦那が見てるよ」
二人とも、それだけ答えた。
ルークは今日は依頼がないらしい。ニコも休みで、サラは朝の畑仕事を早めに終わらせて戻ってきた。
珍しく全員揃っている。
私は朝から気になっていた。
昨日、サラに家にいてくれと言われたからだ。
でも誰も何も言わない。
カイルとルークは話しているし、ミラはサラと何か確認している。ニコはいつも通り本を読んでいる。
私は洗濯物を干した。
戻ってきても、まだ何もない。
昼が近くなった。
「ねえ」
「何?」
サラが振り向いた。
「私、今日家にいろって言われたよね?」
「言ったよ」
「何かあるんじゃないの?」
「あるよ」
「いつ?」
「もう少し」
何を待っているのだろう。
まあいい。
昼の準備を始める。
全員いるので、量が多い。
カイルが台所を覗いた。
「手伝う?」
「いい。座ってな」
「人数多いよ?」
「昔はもっと大変だったよ」
食べ盛りが五人いた頃に比べれば、大人五人くらい何でもない。
いや、よく食べるのもいるけど。
昼を食べ終わると、なぜか誰も帰らなかった。
食器を片付けていると、ミラが来た。
「おばさん、終わった?」
「もう少し。何?」
「終わったら来て」
「どこに?」
「居間」
同じ家の中で呼び出された。
食器を片付け、手を拭いて居間へ行く。
全員いた。
カイル。
ミラ。
ルーク。
サラ。
ニコ。
並んでいるわけではないけど、全員こっちを見ている。
「何?」
サラが立ち上がった。
手に小さな包みを持っている。
昨日カイルが持ってきたものとは違う。
「おばさん、これ」
渡された。
「何?」
「開けて」
言われたので開ける。
布の中から出てきたのは、小さなお守りだった。
見覚えのある形に似ている。
でも、私が作ったものとは違う。
金属の枠。
中には、小さな石が収まっていた。
石には少し色がある。
角度を変えると、光り方も変わった。
「これ、昨日の石?」
ルークに聞く。
「そう。依頼の途中で見つけた」
やっぱり石だった。
「これをどうしたの?」
「俺が持ってきて、カイルが加工を頼んだ」
カイルが続ける。
「俺がやったのは工房に持っていっただけだけどね。枠は前におばさんのお守りを作ってもらったところ」
なるほど。
昨日の包みはこれだったらしい。
裏返す。
文字が一つ入っていた。
仁。
私が自分のお守りに入れた文字と同じだった。
「これも仁なんだ」
「そこは変えなくていいだろうって、みんなで決めた」
ニコが言った。
私はもう一度表を見る。
「紐は?」
聞くと、サラとミラが顔を見合わせた。
「私たち」
サラが言った。
紐はオレンジを中心に、細い赤と紺が一緒に編み込まれていた。
見覚えがある。
「あ」
「気付いた?」
サラが笑った。
「この前買った糸?」
「そう」
だから赤とオレンジと紺だったのか。
何を作るのかと思っていた。
「でも、何で三色?」
サラは少し考えた。
「オレンジはおばさんでしょ?」
「うん」
「赤は私」
「うん」
サラがニコを見る。
ニコもこちらを見る。
「紺はニコ」
「そうだね」
それは知っている。
前に作ったお守りの色だ。
「他のみんなの色は?」
「入れたかったんだけど、全部入れるとすごい色になるからやめた」
ミラが言った。
確かに。
青と緑と黄色と薄緑と茶色まで入れたら、かなり賑やかになる。
「だから三色?」
「その三色が一番まとまったの」
ミラが答えた。
そういうものらしい。
私はお守りを手のひらに乗せた。
前に自分で作ったものより、少し重い。
「でも私、お守り持ってるよ?」
言うと、サラがすぐに答えた。
「それ、自分で作ったやつでしょ?」
「そうだけど」
「これは私たちが作ったの」
私たち。
もう一度、みんなを見る。
カイルもミラも、ルークもサラもニコもいる。
昔は、この五人に食べさせるだけで大変だった。
カルト芋ばかり食べた。
少ない小麦粉を水で伸ばして、何とか量を増やしたこともある。
米を見つけた時は、本当に助かった。
安かったから。
あの頃の子供たちが、今は私のお守りを作っている。
「……ありがとう」
それだけ言った。
他に何を言えばいいのか分からなかった。
「付けてみて」
サラに言われて、首に掛ける。
長さもちょうどいい。
「どう?」
「いいんじゃない?」
「それだけ?」
「似合ってるかどうか、自分じゃ見えないよ」
カイルが笑った。
「おばさんらしい」
「何が?」
「そういうところ」
失礼な気がする。
でも、みんな笑っている。
私も少し笑った。
その日の夜。
寝る前に、もう一度お守りを手に取った。
表には、ルークが持ち帰った石。
裏には、仁。
周りの枠はカイルが工房へ頼んだもの。
紐はサラとミラ。
文字や形は、ニコも一緒に考えたらしい。
五人で作ったお守り。
自分で作ったものとは違う。
前のお守りも大事なので、しまわない。
どちらも持っていればいい。
私は新しいお守りを枕元に置いた。
明日から使おう。
長持ちするといい。
せっかく作ってもらったのだから、できるだけ長く使いたい。




