第47章 ④
ルークたちが帰ってきたのは、その翌日だった。
予定通り。
三人とも怪我はない。
ルークが玄関へ入ってきた時、一応上から下まで見る。
血はついていない。
服も破れていない。
歩き方も普通。
大丈夫そうだ。
「おかえり。どうだった?」
「普通」
「危ないことはなかった?」
「なかった」
ならいい。
ダンとエリオも一緒だった。
報告を終えた帰りらしい。
「お邪魔します」
「どうぞ」
もう二回目だ。
名前も覚えている。
今日は間違えない。
サラは庭にいた。
イナを洗っている。
「じっとして!」
していない。
イナが逃げる。
サラが追う。
捕まえる。
また逃げる。
何をしているんだろう。
「手伝おうか?」
ダンが外へ出た。
「大丈夫!」
サラが答える。
その直後、イナが走った。
ダンの横を抜ける。
「うわっ」
「イナー!」
結局ダンも追いかけることになった。
エリオは手伝わなかった。
賢い。
ルークも手伝わない。
兄なのに。
私はタオルを用意する。
しばらくして、イナが捕まった。
濡れた。
サラも濡れた。
ダンも少し濡れた。
「ごめんね」
「いや、面白かった」
「イナ、逃げるんだよ」
「元気だな」
「元気だよ」
知っている。
多分、私より元気だ。
サラがイナを拭く。
ダンも横から手伝っている。
仲良くなったらしい。
ニコはまだ仕事から帰っていない。
残念。
何が残念なのか分からないけど。
夕方近くになって、ダンとエリオが帰ることになった。
「じゃあ、また」
エリオが先に外へ出る。
ダンは少し残った。
サラを見る。
「サラ」
「何?」
「今度の休み、町に行かない?」
「町?」
「うん。何か食べたり、店見たり」
サラが首を傾げる。
「何か買うの?」
「いや、買わなくてもいいけど」
「何しに行くの?」
ダンが止まった。
難しい質問だったらしい。
「遊びに?」
「遊びに」
サラが考える。
その横からルークが口を挟んだ。
「何で?」
ダンがルークを見る。
「何でって」
「町なら一人で行けるだろ」
「そういう話じゃない」
「じゃあ何?」
ルーク。
何か面倒くさい。
エリオが外から戻ってきた。
「ダン。諦めろ」
「まだ何もしてない」
「もう無理だ」
何が。
サラは二人を見ている。
「町なら、おばさんと行くよ?」
今度はダンが止まった。
「……おばさんと?」
「うん」
私?
「何で私?」
「この前、糸買いに行くって言ってたでしょ?」
言った。
「一緒に行こうと思ってた」
そうなのか。
初めて聞いた。
「ダンも糸買う?」
「いや」
「じゃあ、何買うの?」
「だから、買い物じゃなくて」
「遊び?」
「そう」
「町で?」
「そう」
サラがまた考える。
ルークがダンを見る。
かなり見ている。
「ルーク」
「何?」
「近い」
一歩下がった。
ダンが私を見る。
助けを求められている気がする。
知らない。
本人達で話してほしい。
「じゃあ、また今度な」
ダンが諦めた。
「うん。またね」
サラが普通に手を振る。
エリオがダンの肩を叩いた。
二人が帰っていく。
ルークはしばらく後ろ姿を見ていた。
「ルーク」
「何?」
「仲間なんでしょ?」
「そうだけど」
「仲良くしなよ」
「仲良くしてる」
そうは見えなかった。
サラはもう気にしていない。
「おばさん、糸いつ買いに行く?」
「まだ決めてない」
「赤も欲しい」
「また赤?」
「赤好きだから」
いつものサラだ。
少しして、ニコが帰ってきた。
「ただいま」
「おかえり」
サラがすぐに言う。
「今度、おばさんと町行くんだ」
「そう」
ニコが鞄を置く。
「ダンにも誘われた」
止まった。
少しだけ。
「……ダンに?」
「うん。遊びに行こうって」
「二人で?」
「多分?」
何で疑問形なんだ。
ニコがサラを見る。
「行くの?」
「おばさんと?」
「ダンと」
「ああ。行かないよ」
「そう」
短い。
でも。
この前より少しだけ顔が普通になった気がする。
気のせいだろう。
「ニコも町行く?」
サラが聞く。
「行く」
返事が早い。
「仕事は?」
「休みなら」
「じゃあ三人で行こう」
「…………うん」
何だ。
今度は返事が遅い。
二十歳は難しい。
私は糸の残りを確認することにした。




