第47章 ②
夕飯は足りた。
豆が多かったから。
サラが今日採ってきた豆を茹でる。
あとは肉を少し増やした。
芋も足す。
人数が二人増えたくらいなら、何とかなる。
ルークの仲間は、結局夕飯までいることになった。
名前も覚えた。
大きい方がダン。
二十五歳。
前で戦う。
盾と剣を使うらしい。
細い方がエリオ。
二十四歳。
短剣と弓。
斥候もする。
ルークが魔法。
三人。
役割はちゃんと分かれている。
「いつから一緒に?」
料理を並べながら聞く。
「何度か同じ依頼を受けてた」
ルークが答えた。
「それで組むことにしたの?」
「うん」
ダンが笑った。
「こいつ、使えるんですよ」
「使えるって」
言い方。
「褒めてます」
「ならいいけど」
ルークは気にしていない。
エリオが芋を一つ取った。
「魔法だけじゃないんですよ。判断が早いんで」
「そうなの?」
ルークを見る。
「普通」
本人はそう言う。
ダンが首を振った。
「危ないと思ったら、ちゃんと戻るんです」
「戻った方がいいなら戻るだろ」
「それができない奴もいるんだよ」
そうらしい。
勝てそうにないなら退く。
前にニコとそんな話をした。
ルークにも似たようなことを言ったことがあっただろうか。
覚えていない。
まあいい。
無事に帰ってくるなら。
「この豆、うまいな」
ダンが言った。
サラがすぐに反応する。
「今日採ったの」
「これ、サラが育てたのか?」
「うん。こっちの畑」
「へえ。畑やってるんだ」
「やってるよ」
「一人で?」
「みんなで。私がやるところも多いけど」
「魔法も使うんだろ?」
「使うよ」
ダンがルークを見る。
「妹も魔法使えるのか」
「使える」
「何が得意?」
サラが答える。
「土」
「土?」
「畑ならすぐ耕せるよ」
「それ便利だな」
「見る?」
「見たい」
サラが笑う。
ダンも笑った。
ニコが芋を食べる。
黙っている。
珍しい。
普段から食事中にずっと話す方ではないけど。
今日は特に静かだ。
「ニコ」
「何?」
「芋あるよ」
「食べてる」
見れば分かる。
何となく声をかけただけだ。
エリオがニコを見る。
「代官府で働いてるんだって?」
「はい」
「ルークから聞いた。補佐やってるとか」
「一応」
「若いのにすごいな」
「人が足りないだけだと思います」
そうなのだろうか。
ニコなら本当にそう思っていそうだ。
「代官って忙しいのか?」
ダンが聞く。
「忙しいですよ」
「何してるんだ?」
「色々です」
「色々?」
「税の記録を見たり、ギルドから来た書類を確認したり、地区ごとの報告をまとめたり」
「俺には無理だな」
ダンが即答した。
「字が多い」
「そこ?」
サラが笑う。
「字が多いの嫌なの?」
「嫌だな」
「本も読まない?」
「ほとんど読まない」
サラがニコを見る。
「ニコと反対だね」
「そうだね」
ニコが答える。
それだけ。
ダンはまた豆を食べた。
「これ、本当にうまいな」
「まだあるよ」
サラが自分の近くの皿をダンの方へ寄せる。
「ありがと」
ニコが見る。
皿を見る。
ダンを見る。
サラを見る。
それから自分の芋を見る。
忙しい。
何を見ているんだろう。
食事が終わる頃には、外が暗くなっていた。
「そろそろ帰るか」
エリオが立つ。
ダンも立った。
「ごちそうさまでした」
「はい。またね」
サラが言う。
「また来ていいの?」
ダンが聞いた。
「ルークの仲間でしょ?」
「まあ」
「じゃあ、いいよ」
私の家だけど。
まあいい。
ダンが笑った。
「じゃあ、また来る」
「うん」
ニコが顔を上げた。
「次の依頼はいつなんですか?」
急に聞いた。
ルークが答える。
「三日後」
「何日くらい?」
「四日か五日」
「二人も?」
「三人で行くから」
「そう」
何だ。
仕事に興味でも出たのだろうか。
ダンとエリオが帰る。
ルークが外まで送っていった。
サラは食器を片付ける。
「面白い人たちだったね」
「そう?」
ニコが言った。
サラが振り返る。
「うん。ダンって人、よく食べるね」
「そうだね」
「豆、気に入ったみたい」
「そうだね」
同じことしか言わない。
「ニコ、疲れてる?」
「疲れてないよ」
「そう?」
「うん」
サラはそれ以上聞かなかった。
私も聞かない。
仕事を始めて二年。
疲れる日くらいあるだろう。
ニコは食器を一枚持って立ち上がった。
サラの横へ持っていく。
いつも通り。
多分。
少ししてルークが戻ってきた。
「帰った」
「そう」
私は残った芋を片付ける。
明日の分には足りない。
また買ってこよう。
ニコが何を考えているのかは分からない。
聞けば答えるかもしれない。
でも、聞くほどのことでもない。
二十歳だ。
自分で考えればいい。




