↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
386/425

第46章 ⑨ 

枠が出来るまで十日。


その間に、紐を作る。


家へ戻る前に、もう一軒寄った。


木工の店。


「これと同じものを、もう一つ作ってほしいんだけど」


家から持ってきたリリアンを見せる。


サラが使っているもの。


丸い木。


真ん中に穴。


周りに六本の針。


「同じ大きさで?」


「少し小さめで」


「針も六本?」


「六本」


難しいものではないらしい。


二日で出来ると言われた。


今度は糸を買う。


八人分。


何色にするか。


自分は決まっている。


オレンジ。


これは迷わない。


ルークは青。


サラは赤。


カイルは緑。


ミラは黄色。


ニコは紺。


残り二人。


カイルの奥さんと、ミラの旦那さん。


本人に聞こうかとも思ったけど。


やめた。


聞いたら何を作るか聞かれる。


別に秘密ではない。


でも、出来てから渡したい。


カイルの奥さんは薄い緑。


カイルと少し似た色。


ミラの旦那さんは茶色。


仕事でも使いやすそうだから。


糸を買って帰った。


二日後、新しいリリアンが出来た。


サラのものと並べる。


一回り小さい。


「おばさんも作るの?」


サラが覗き込む。


「作る」


「何を?」


「紐」


「私が作ろうか?」


「これは私が作る」


「何で?」


「作りたいから」


「そっか」


納得した。


早い。


サラは自分のリリアンを持って、向かいに座った。


「じゃあ、私も作る」


何を作るのかは知らない。


でも楽しそうなので放っておく。


私は新しい方を手に取る。


六本。


全部は使わない。


一つ飛ばし。


三本。


昔、見たことがある。


普通とは少し違う編み方。


細い糸だけなら、それほど難しくない。


問題は。


「これ」


細い金属の糸。


糸というより、細い線。


柔らかいものを探してもらった。


曲がる。


でも、簡単には切れない。


これを糸と一緒に掛ける。


多分丈夫になる。


「おばさん、それ何?」


サラが見ている。


「補強」


「入れるの?」


「入れてみる」


「大丈夫?」


「分からない」


「分からないの?」


「やったことないから」


サラが少し心配そうな顔をした。


「失敗したら?」


「やり直す」


それだけだ。


最初は自分の分。


オレンジ。


失敗しても困らない。


糸と細い金属を揃える。


三本の針に掛ける。


一つ。


飛ばす。


一つ。


飛ばす。


一つ。


昔見たやり方を思い出しながら、動かす。


最初は遅い。


金属が少し引っ掛かる。


戻す。


やり直す。


また進める。


真ん中の穴から、少しずつ紐が出てきた。


「出来てる」


サラが言う。


「まだ分からない」


もう少し。


少し長くなったところで止める。


引っ張る。


思ったより丈夫。


曲げる。


ちゃんと曲がる。


「いけそう」


「貸して」


サラが引っ張る。


「強い」


「でしょ」


「私のより強い」


「金属入ってるからね」


問題は重さ。


持ってみる。


それほどでもない。


五百円玉の方が重い。


これなら大丈夫そうだ。


そのまま続ける。


オレンジ。


一本目。


長さを決める。


首から下げるものではない。


鞄。


腰。


小物入れ。


好きなところに付けられるくらい。


昔のものより少し長くする。


出来た。


「一本」


テーブルへ置く。


サラが見る。


「綺麗」


「最初にしてはね」


少し歪んでいるところがある。


自分のだからいい。


次。


青。


ルーク。


三本目。


赤。


サラ。


「それ私?」


「まだ言ってない」


「赤だもん」


ばれた。


「私の?」


「そう」


サラが嬉しそうに笑う。


「じゃあ、これ何?」


「お守り」


「新しいの?」


「うん」


「前のも持ってるよ」


「それはそのまま持ってな」


「うん」


古いものは古いもの。


新しいものは新しいもの。


どちらかを捨てる必要はない。


「ニコのは?」


「紺」


「何で?」


「何となく」


「私が決めてもいい?」


「もう買った」


「そっか」


諦めるのも早い。


四本目。


緑。


カイル。


五本目。


黄色。


ミラ。


六本目。


薄い緑。


カイルの奥さん。


七本目。


茶色。


ミラの旦那さん。


最後。


紺。


ニコ。


八本並べる。


オレンジ。


青。


赤。


緑。


黄色。


薄い緑。


茶色。


紺。


少しずつ長さが違う。


太さも。


最初のオレンジだけ、少し歪んでいる。


でも味があるし全部丈夫だ。


「出来た?」


サラが聞く。


「出来た」


「八本」


「八人だからね」


サラが一本ずつ見る。


「おばさんのは?」


「オレンジ」


「やっぱり」


「何が?」


「おばさん、オレンジ好きだもん」


そうだった。


昔から何となく選ぶ。


気付けばオレンジ。


サラが赤い紐を触る。


「枠は?」


「あと何日か」


「楽しみ」


「自分のだけでしょ」


「みんなのも」


そういうところ。


だから愛。


八本の紐をまとめる。


枠が出来たら。


あとは通すだけ。


昔は、あるもので作った。


百円玉。


簡単な枠。


革紐。


それでも十分だった。


今は。


五百円玉。


ちゃんとした枠。


自分で作った紐。


少しだけ。


出来ることが増えた。


お金も。


時間も。


家族も。


増えた。


悪くない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。