↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
372/425

第45章 ① 

暇になった。


サラが畑をやってくれるようになってから、かなり暇になった。


朝、畑を見る。


「モグルいっぱい」


土が動く。


終わる。


早い。


昔なら、土を耕して。


石を拾って。


根を取って。


畝を作って。


一日仕事だった。


今はサラがやる。


「終わった」


「早いね」


「うん」


本人も満足そうだ。


便利。


とても便利。


でも私の仕事がない。


温泉の掃除はする。


家のこともする。


内職があれば、それもする。


それでも時間が余る。


子供達が小さかった頃は、暇なんてなかった。


ご飯を作って。


洗濯して。


畑をやって。


誰かが何かをして。


誰かが何かを壊して。


イナが何かを盗んで。


毎日忙しかった。


今は静かだ。


ルークは依頼。


ニコは学校。


カイルとミラは、それぞれ自分の家。


サラは畑。


イナは寝ている。


「暇だね」


イナを見る。


尻尾だけ動いた。


暇ではないらしい。


何かしよう。


昔やっていたことを考える。


料理。


今もしている。


裁縫。


必要ならする。


編み物。


そういえば。


「レース編み」


昔、やっていた。


細い糸を針で編んで、模様を作る。


花瓶の下に敷くくらいの小さいもの。


棚に敷くもの。


少し大きくすれば、テーブルの上にも使える。


服にも使える。


襟。


袖。


裾。


細い糸なら繊細になる。


刺繍に使うような糸なら、模様もはっきりする。


「ミラにいいかも」


服を作っている。


旦那さんは染色職人だ。


編んだ後から染めることもできるかもしれない。


売れる。


多分。


私はお金が好きだ。


でも、これは私が売らなくてもいい。


ミラが使えばいい。


問題は。


「針がない」


糸はある。


こっちの普段使いの糸。


帆布を縫う位。


もっと細い糸もある。


刺繍や、貴族の服に使うもの。


高い。


今まで買ったことはなかった。


必要なかったから。


でも。


今回は趣味だ。


「買おう」


貯めておいても仕方ない。


使いたいものには使えばいい。


でも、レース編みに使う細い針は見たことがない。


作ってもらえばいいか。


昔使っていた物を思い出す。


細い。


先が少し曲がっている。


糸を引っ掛けられればいい。


私は紙を出した。


絵を描く。


細い棒。


先に小さな鉤。


「……こんな感じ」


多分。


これなら鍛冶屋で作ってもらえるだろう。


その日のうちに頼みに行った。


数日後。


細い針ができた。


少し太い。


でも使えそうだ。


もっと細いものも頼む。


糸も買った。


まず試す。


鎖を作る。


輪にする。


編む。


久しぶりなので少し遅い。


でも、手は覚えていた。


一段。


二段。


少しずつ模様ができる。


「何作ってるの?」


サラが覗き込む。


「花瓶敷き」


「花瓶?」


「の、下に敷く」


「何で?」


「綺麗だから」


サラが考えた。


「なくてもいい?」


「なくても困らない」


「何で作るの?」


「暇だから」


「そっか」


納得した。


そこは納得するらしい。


夕方には一枚できた。


思ったより早い。


久しぶりでも、これくらいならできる。


もう一枚。


今度は少し模様を変える。


次の日。


四枚になった。


「できた」


並べる。


悪くない。


一枚は細い糸。


一枚は少し太い糸。


残りは刺繍に使う色のついた糸で試した。


これなら服にも使える。


私は四枚を持った。


「どこ行くの?」


サラが聞く。


「ミラの家」


「売るの?」


「教えるの」


「商人は?」


「教えない」


サラが私を見る。


「何で?」


「今回はミラのだから」


商人には、もう色々教えた。


油。


カレー。


味噌。


他にもある。


十分だ。


これは娘にあげる。


私はレースを鞄に入れた。


それから、作ってもらった針も一本。


ミラなら、多分すぐ覚える。


旦那さんなら、染め方を考えるだろう。


二人で好きにすればいい。


私はミラの家へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。