第44章 ⑤
数日後。
商人ギルドから人が来た。
土地の確認が終わったらしい。
「登録できます」
「全部?」
「家の周辺と、現在畑として使っている場所は問題ありません」
よかった。
「洞窟は?」
「そちらも所有者はいません。ただ、周辺の範囲を確認したいそうです」
「誰が?」
「土地を確認する担当です」
後ろに男が二人いた。
一人は紙を持っている。
もう一人は杭を持っていた。
本格的だった。
「今から?」
「ご都合が悪ければ後日でも」
「大丈夫」
今日は温泉掃除も終わった。
サラを見る。
「行く?」
「行く」
ルークはいない。
依頼に出ている。
帰るのは明後日の予定だ。
少し遠い仕事だった。
昔なら心配で仕方なかったと思う。
今も心配だけど。
少しだけ慣れた。
多分。
サラと一緒に洞窟へ向かう。
イナもついてきた。
担当の人達も後ろから来る。
道は昔より歩きやすくなっていた。
私達が何度も通ったからだと思う。
しばらく歩く。
洞窟が見えた。
「久しぶり」
私が言う。
サラが洞窟を見る。
「小さい」
「そう?」
「昔、もっと大きかった」
「サラが小さかったからじゃない?」
サラが考える。
「そうかも」
多分そうだ。
五歳だった。
ルークも八歳。
よくここで暮らしていたと思う。
中へ入る。
今は何もない。
昔使っていた物は、とっくに家へ移した。
壁。
地面。
奥。
変わっていない。
当たり前か。
洞窟だから。
「この辺りまででいいですか?」
担当の人に聞かれた。
外へ戻る。
紙を見せてもらう。
洞窟を中心に、その周り。
思ったより広い。
「こんなにいる?」
「洞窟だけを登録すると、入口周辺が別の所有地になる可能性があります」
それは困る。
「じゃあ、そのままで」
「こちら側は?」
指された方を見る。
森。
特に何もないけど、洞窟のベランダ辺り迄は。
「この辺り迄」
「分かりました」
必要なのは洞窟と、そこへ入るための場所。
後はルークの秘密の場所から見える所。
森全部はいらない。
土地持ちになりたいわけではない。
担当の人達が歩く。
杭を打つ。
位置を確認する。
サラがそれを見ていた。
「ここ、私とルークのになるの?」
「私が死んだらね」
「まだ?」
「まだ」
「じゃあ今はおばさんの?」
「登録できたら」
サラが頷く。
「分かった」
イナが洞窟の前に座っている。
昔も、ああしていた気がする。
「イナ、覚えてる?」
呼ぶとこっちを見た。
尻尾を振る。
分かっているのかは分からない。
犬だから。
確認が終わった。
あとはギルドで正式に登録するだけらしい。
もちろんお金はかかる。
「いくら?」
金額を聞く。
思っていたより高い。
「高いね」
「範囲がありますので」
「払うけど」
必要なお金だ。
仕方ない。
帰る前に、もう一度洞窟を見る。
ここにルークとサラがいた。
イナもいた。
その後、私が来た。
もし。
いつかまた誰かがここへ来るなら。
今度は洞窟だけじゃない。
少し歩けば家がある。
多分。
誰かがいる。
「帰ろうか」
「うん」
サラが歩き出す。
イナもついてくる。
私は最後に洞窟を見る。
何も起きない。
静かな洞窟だった。
それでいい。
今は。




