第44章 ①
あれから三年経った。
ルークは十八歳になった。
冒険者を続けている。
最初は薬草を採っていた。
そのうち魔物を倒す依頼も受けるようになった。
今では数日帰ってこないこともある。
最初の頃は気になった。
一日。
二日。
三日。
帰る予定の日になると、家の方を見る回数が増えた。
今は少し慣れた気がする。
サラは十六歳になった。
畑にいる。
三年前と変わらない。
変わったのはモグルだった。
「モグルいっぱい」
地面が動く。
早い。
昔は言うまでにしばらく考えていた。
今は畑を見るだけで大体できる。
毎日使っていたら早くなったらしい。
師匠が言っていた通りだった。
畑も練習になる。
師匠は喜ぶか、畑だと知ったら微妙な顔をするかもしれない。
ニコも十六歳。
まだ学校にいる。
時々帰ってくる。
首席かどうかは聞いていない。
本人が何も言わないから。
多分、ちゃんとやっているだろう。
カイルとミラは、それぞれ自分の家で暮らしている。
たまに来る。
カイルは家族四人で来るので、一気に騒がしくなる。
ミラも自分の家族を連れてくる。
昔はこの家に子供がたくさんいた。
今は普段、私とサラ。
ルークはいる時といない時がある。
イナもいる。
随分静かになった。
街も少し変わった。
おばちゃんが亡くなった。
いつも屋台にいた人。
私がこの世界へ来て、最初の頃から知っていた人。
コルン焼きを一緒に売った。
カイル達を見つけてくれたのも、おばちゃんだった。
もう屋台にはいない。
おばちゃんの息子はいる。
商人ギルドのギルドマスターになった。
偉くなった。
昔から知っているので、偉い人という感じがあまりしない。
本人には言わない。
商人も仕事を息子へ渡し始めた。
薬師も後任を連れてきた。
みんな年を取った。
当然だ。
私も取った。
六十を過ぎた。
この世界なら、いつお迎えが来てもおかしくない歳だという。
なので少しずつ身の回りのことを整理しようと思っている。
でも。
今日も朝から畑へ行った。
サラが大体終わらせていた。
「早いね」
「うん」
「私の仕事は?」
サラが考える。
「温泉?」
そうだった。
温泉へ行く。
隣なので近い。
掃除をする。
いつの間にか私の仕事になっていた。
最初は暇だったからやっていただけだ。
掃除して。
湯の周りを片付けて。
気になるところを直して。
それを繰り返していたら、商人ギルドと冒険者ギルドから駄賃を貰うようになった。
別にいらないとは言わなかった。
お金は好きだ。
働いた分なら、ちゃんと貰う。
内職もまだやっている。
手伝いを頼まれれば行く。
値段はきちんと取る。
時々。
「高くないか?」
と言われる。
嫌なら自分でやればいい。
大体払う。
だから。
お金は少しずつ貯まっている。
ルークとサラの修行中は、二人の手当が必要だった。
ニコの学校にもお金がかかる。
でも、修行は終わった。
ニコもあと何年かすれば学校を出る。
大きなお金が必要になることは減った。
生活にも、そんなにお金はかからない。
家はある。
畑もある。
必要な商品は、商人との契約で原価で買える。
昔、商品の作り方を教えた時。
売れた分からお金を貰うのは面倒だったので、その代わりにそうした。
必要な物を必要な分だけ買う。
それで十分だった。
商人にはかなり得だったらしい。
私は安く買えたので、私も得だったと思う。
問題ない。
ただ一つだけ考えていることがある。
私が死んだら、この契約はどうなるのだろう。
ルークは冒険者になった。
サラは畑をやっている。
二人とも、もう自分で生きていける。
それでも安く買えるなら、その方がいい。
今度、商人に聞いてみよう。
ルークとサラにも。
おばさん特価を引き継げないか。
ダメだとは言わせない。
それくらいは残してもいい。




