第43章 ④
畑を増やした。
まだ増やしたい。
でも。
少し問題があった。
私は畑の向こうを見る。
草。
その先にも草。
少し低い木も生えている。
あそこまで畑にできたら広い。
かなり広い。
「サラ」
「なに?」
「ここもできる?」
サラが見る。
「できる」
やっぱり。
後ろから声がした。
「増やさないって話じゃなかった?」
ルークだった。
「増やさないとは言ってないよ」
「言ってないけど」
「少しだけ」
ルークが畑を見る。
昨日増えた分を見る。
これから増やそうとしている場所を見る。
「少し?」
「多分」
ルークがため息をついた。
「草とか木はどうするの?」
それだった。
サラなら根ごと抜けると思う。
でも量が多い。
抜いた後も邪魔だ。
運ぶのも大変。
私は考えた。
草。
木。
畑。
昔聞いたことがある。
「焼く?」
ルークが止まった。
「何を?」
「あそこ」
指を差す。
「焼くの?」
「うん」
「全部?」
「うん」
ルークが私を見る。
嫌な予感がする時の顔だった。
「俺に?」
「できる?」
聞いてみた。
ルークが黙る。
出来ないなら仕方ない。
別の方法を考える。
「……できるよ」
できるらしい。
「じゃあお願い」
「待って」
最近よく待たされる。
「火だよ?」
「うん」
「広がったら危ないよ?」
「サラ」
呼ぶ。
「なに?」
「周り、燃えないようにできる?」
サラが土地を見る。
考える。
「できる」
ルークが黙った。
「どうするの?」
「土」
「うん」
「周り掘る」
なるほど。
燃えるものがなければ広がらない。
「じゃあ大丈夫」
「何で二人だけで話が終わるの?」
大丈夫だから。
サラが歩いていく。
燃やす場所の周りを見る。
また考えている。
「モグル?」
「うん」
しばらく待つ。
「できる」
サラが地面へ手をついた。
「モグルいっぱい」
地面が動く。
草の生えている土地の周りに、ぐるりと土の帯ができた。
表面の草も根も外されている。
「これなら?」
私が聞く。
ルークが確認しに行く。
随分慎重だ。
何ヶ所も見る。
戻ってくる。
「……まあ、大丈夫だと思う」
「じゃあ焼こう」
「軽いなあ」
ルークが燃やす場所を見る。
今度はルークが考える。
サラより短い。
手を向けた。
火が走った。
「おお」
草に火がつく。
乾いたものから燃えていく。
低い木にも移る。
ぱちぱち音がする。
私は少し離れて見ていた。
サラも隣にいる。
ルークだけ忙しそうだった。
火の動きを見ている。
広がり方を見る。
風も気にしている。
時々、火を弱める。
一流魔法使い。
凄い。
ちゃんと凄い。
やっていることは焼き畑だけど。
しばらくして火が消えた。
黒くなった地面が残る。
ルークが息を吐いた。
「終わった」
「ありがとう」
「どういたしまして」
少し疲れていた。
私は焼けた場所を見る。
灰がある。
これを土に混ぜればいい。
「サラ」
「うん」
まだ何も言っていない。
サラが前へ出た。
「分かった?」
「混ぜる」
分かっていた。
「待って」
ルークが言った。
サラが止まる。
「まだ熱いところあるから」
「そうか」
危ない。
冷めるまで待つことになった。
私は畑を見る。
昨日まで草地だった。
今日焼いた。
冷めたらサラが耕す。
畑になる。
早い。
とても早い。
「ルーク」
「なに?」
「便利だね」
「何が?」
「二人とも」
ルークが嫌そうな顔をした。
サラは嬉しそうだった。
「俺、一流になったんだけど」
「うん」
「これから冒険者になるんだけど」
「うん」
「帰ってきて最初にやったのが焼き畑なんだけど」
そうだった。
「役に立ったね」
「……うん」
認めた。
偉い。
師匠が昨日帰っていて良かったと思う。
七年かけて育てた二人の魔法使いが。
一人は畑を耕し。
一人は畑を焼いている。
多分見ない方が幸せだ。




